2020年04月24日 1622号

【ドクター 感染源不明を広げた検査サボタージュ】

 緊急事態宣言を出した理屈は「感染源不明の患者が急増したため」とされています。では「感染源不明」の急増はなぜ生じたのでしょうか? コロナ対策の柱であるはずの、感染者の周辺を徹底的に調査・検査し、感染を広げないとの厚労省の基本政策がさぼられたためと思われます。これは五輪開催への固執とも関連しているに違いありません。

 感染者と接触し感染した人が検査なしで患者とならず、その人から電車など特定不可能な感染経路を通じてうつされた患者が「感染源不明」となるのです。

 日本の検査件数は世界的に異常に少ないのです。オックスフォード大調査では、人口100万人当たり検査人数は、台湾899人、韓国6148人、ドイツ2023人などに対し、日本はたった118人でした(集計日3/14〜3/20)。

 また、3月末までに全国で発見された感染者数の15・2倍検査しているのに、東京は5.7倍、大阪は3・7倍しか検査していません。多数の検査漏れの患者が出るのも当然です。

 この検査の少なさには、アメリカ大使館でさえ「広くテストしないという日本政府の決定」と明言。政府の検査サボタージュはもはや世界の常識です。

 検査数が少ない理由は、まず、感染者と接触した人で感染している可能性が高くても症状がなければ検査をしないと決めているからです。2月26日までの厚労省「診療の手引き」では、新型コロナらしい症状が出ても、感染者ないし感染疑いの強い人との「濃厚接触」者以外は検査できませんでした。27日以後は、患者が熱+咳+「入院を要する肺炎が疑われる」場合と、「医師が総合的に判断した結果、感染を疑う、場合」が追加されましたが、多数の感染者が検査を拒否されているはずです。その少なさは、帰国者・接触者相談センター相談件数(2/1〜3/31)31・3万件中、検査は1・2万件だけという数字にも表れています。

 感染者数を隠そうとしたために基本方針の遂行ができず、「感染源不明患者」が急増すると、今度はそれを口実に緊急事態宣言を出す。政策の失敗のつけを国民に押しつけているのです。毎日新聞世論調査(4/8)は、「緊急事態宣言」賛成7割とする一方、「遅すぎた」も7割としており、これは一連の検査拒否、感染かくし政策への批判とも読み取れます。

(筆者は小児科医) 
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