2020年05月01日 1623号

【1623号主張/命守らぬ緊急事態全国化/新自由主義でなく予算、人員を】

批判に押されて10万円

 安倍政権は4月17日、ようやく「全国民対象」に一律10万円の現金給付を決めた。公明党に連立政権離脱をちらつかされ、渋々の受け入れだ。「所得減少世帯にのみ30万円給付」は総スカン。市民の強い批判に政府は転換を余儀なくされた。

 いつ支給されるか分からないこの案で市民の怒りは収まらない。「毎月の給付くらいでなければ意味がない」の声が噴出する。都内在住者からは「1回限りでは家賃ひと月分にもならない」と悲痛な声が上がる。

 権力を弄(もてあそ)ぶ緊急事態宣言を全国に拡大し、休業を求めておきながら補償もしない。自民党内でも「このままでは倒産が続発すると党幹部に言ったら、持たない企業は潰すと言われた」と憤る若手議員が現れた。一握りのグローバル資本さえ守れれば、支持基盤であったはずの中小自営業者も見捨てる。安倍政権と自民党の醜い本質だ。

医療崩壊の元凶

 新型コロナ患者は増大の一途だ。東京など8都府県では病床が逼迫(ひっぱく)していることが判明した(4/18共同)。感染症指定医療機関は全国でたった410機関1871床、都では15機関118床のみで、一般病院は病床数に対する患者数95%の義務づけなど詰め込み状態だ。政府によるコロナ対応病床の過大発表が暴かれ、ついに重篤化患者を救急搬送できない事態まで現れた。

 コロナ以前から救急患者の搬送拒否件数は東京が全国最多で埼玉がそれに次ぐ。2013年には埼玉で搬送拒否の救急患者死亡事件が起きた。自治体も病院も全く対応できていない。ところが、政府は25年までに高度急性期や急性期の病床を約20万床減らす計画だ。20年度予算では病床を削減する病院に補助金まで出す。

 新型コロナから命を守らなければならない重大局面で、経営効率―儲け優先の新自由主義は市民の命と健康を奪う。医療は公共財であり市場原理では維持できない。コロナ禍はこの当然の事実を鮮明にしたのだ。

対案掲げ命を救え

 ただちに政府の責任で医療体制拡充と損失補償をさせなければならない。

 英国では月33万円を上限に政府が月収の8割を3か月間補償する。ドイツは3か月最大105万円の補償を打ち出した。日本とは雲泥の差だ。辺野古新基地建設をはじめとする軍事費を削り、カジノやリニアなどをやめ、グローバル資本、富裕層への課税を強化すれば財源はある。

 地域から声を上げ、政府の責任を追及しよう。緊急事態宣言などいらない。緊急に必要な検査・治療体制拡充と予算・人員増、生活保障への個人給付など、コロナ対策の対案を突きつけよう。窮地に追い込まれている人たちとともに立ち上がり、命、健康、生活を守ろう。

 (4月18日)
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