2020年05月01日 1623号

【あやしい新型コロナ治療「薬」 安倍案件 アビガン200万人備蓄 効果の証明なく危険性も】

 3月28日、日経新聞は「新型コロナ治療薬『アビガン』承認へ 首相表明」と報じ、31日には製造販売の富士フイルムが承認をめざし国内治験開始。4月7日には、効くか効かないかも分からないのに200万人分を139億円の経費をかけて備蓄を決めています。

 同日、ノーベル賞受賞者本庶佑(ほんじょたすく)氏が「死者を減らすため、治験と同時並行で…使用を進めるべき」とデマを述べています。この主張は一見「積極的」ですが、患者にはとても危険です。その薬を使って死亡が増えるかも知れないからです。これまでのところ、アビガンはもちろん、コロナ感染症の死亡を減らした薬はありません。

 また、これは多くの犠牲を払って勝ち取った民主的薬剤評価制度への攻撃です。新型コロナで前例を作り、今後は単に「効くかもしれない」他の「薬」でも簡単に認可しかねないからです。

 2月29日、安倍首相が「観察研究としての患者への投与をすでにスタート」と表明し、アビガンが今にも使用できるかのように言いました。が、「使ったら効いた」的な観察研究で本当の効果は分かりません。

動物実験で死亡・奇形増

 現在、世界で多くの「薬」が新型コロナ患者で試験されています。ほとんどは、エイズやマラリアなど他の病気に認可されているものです。

 先のアビガンも、抗インフルエンザ「薬」として認可されています。その際、多数の患者を平等に2群に分けてアビガン群と偽の薬群などと効果を比較するRCTという厳密な研究がされています。それらの中には、効いたとされる試験結果もありますが、効かなかったというものもあり、効果についても怪しいのです。しかも、動物実験で胎児の妊娠後の死亡率・奇形の増加や精子の異常も出たため、使用には、その度に国の許可が要るという異例の条件で認可されています。

 ところが、2017年には200万人分を目標に備蓄が決められました。アビガンを開発した富士フイルム会長が安倍首相の仲良し(4/16週刊文春)で、いわば安倍案件「薬」の疑いがあります。

死亡減のデータなし

 新型コロナにもどります。

 アビガンの「物質特許」はすでに切れていて、中国企業は別の商品名でアビガンの「ジェネリック」(後発医薬品)を作っています。その製品は、新型コロナ患者を対象に、中国で前述のRCTがされ、その結果が論文として医学雑誌に投稿されオープンに読めます。

 それによれば、RCTとはいえ、この実験には、医師も患者も、誰がどの薬を使っているかがわかるという重大な欠点があります。これでは、医者がひいきにしている薬の方が肺炎が早く治ったとの結果も出せます。患者が良くなったと思うこともあり、厳密さに欠けます。さらに、最重要目標としていた試験開始7日目での症状の回復率では、効果を証明できていません。中等症患者に限ると病状改善率が16%程度良かったとのデータも出ましたが、効果を証明したとは言えません。もちろん、死亡を減らしたとのデータは全くありません。

 なお、もう一つ、アビガンが大変効いたとする中国からの論文が出ていましたが、こちらは雑誌への掲載を取り下げています。本当は効果がなかったのかも知れません。

タミフルの「記憶」

 日本でもRCTによる実験が始まっていますが、これも、医師がどの患者にアビガンを使っているか分かる研究方法であり、政府と企業の圧力で医師の判断がアビガンに有利に働く可能性があり、警戒が必要です。

 思い起こして下さい。2009年の新型インフルエンザ大流行の時、タミフルが入院や死亡を減らすとされて世界中で備蓄されました。しかし、そのタミフルの「効果」は、実はウソだったことを。

(医療問題研究会・林敬次〈本紙コラム執筆者〉)





 
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