2020年05月01日 1623号

【議会を変える、市民と変える」 市民に真によりそう市政とは 京都府向日市議 杉谷伸夫】

 昨年6月に向日市で、生活保護利用者の男性が同居の女性を殺し(傷害致死罪などで起訴済み)、担当していた若手の生活保護ケースワーカー(以下CW)が、遺体遺棄の共犯で逮捕されるという衝撃的な事件がおきました。市民の中からは、若手CWを事件に追い詰めた向日市の責任を問う声が早くから上がっていました。

 若手CWの刑事裁判の中で、驚きの事実経過が明らかになりました。女性を殺したのは元暴力団員で、過去に同様の傷害致死事件を2回も起こしており、若手CWに対して毎日2時間以上にわたる電話で不当要求、恫喝を続けていました。当然上司を含む周りの職員は、その状況を日々見ていたのに特に異常と認識せず放置し、警察との連携も行われませんでした。

 CWは不眠が続き体調に異変をきたし、その状況と異動希望を自己申告書に書いて提出したのに、事情聴取も行われず無視されました。そして男からの連日の脅迫により精神的に追い詰められ、徐々に男の支配下に置かれていったのです。

 事件の日、男はCWに遺体遺棄を手伝うことを要求しました。「協力できないのだったら、口封じのためにお前を殺さないとあかん」

 向日市が設置した第三者を含む検証委員会は3月末に事件の検証報告書を発表し、以上のような事件に至る経過を明らかにし、向日市行政の組織的対応の欠如と、生活保護行政の体制と専門性の不備を厳しく指摘しました。ところがその2週間後に向日市は、若手CWに対し、向日市への信頼を大きく損ねたとして懲戒解雇処分を行ったのです。市長は、向日市の責任には一言も触れませんでした。検証委員会の報告書の指摘を、向日市が正面から受け止めているのか疑問です。

 同じ職場で日々一緒に働く部下や同僚が、このような異常な状態で苦しんでいても助けることができずに、果たして市民によりそった仕事ができるでしょうか。自分がつぶれそうだと訴えている職員に手をさしのべない組織に、職員は安心・信頼を持って働けるでしょうか。

 向日市行政全体が問われているのです。

 向日市が本気で市民によりそい、同時にそこで働く労働者を大切にする市政改革に踏み出さなくては、市民の信頼を回復することはできません。これからが本番です。
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