2020年05月01日 1623号

【みるよむ(553)2020年4月18日配信 イラク平和テレビ局in Japan 新型コロナウイルスとイラク市民】

 新型コロナウイルスの被害は中東にも広がっている。イラクでは、2003年の米軍による占領以後、公的な医療体制が破壊されてきた。市民は状況をどう見ているのだろうか。サナテレビはバグダッド市民にインタビューを行った。

 最初に登場する市民は「治療よりも予防の方が大事」「イラクには医療行政当局があるのだから、できる限り防がなければならない」と述べる。市民の友人は台湾にいて、台湾政府は徹底した消毒など感染拡大防止の努力を積極的に進めているという。「残念ながらイラクは違う。市民は情報を知らず、心の中の問題でありアラーの神が助けてくれるととらえる面もある」

 この市民はもっと根本的で深刻な問題を指摘する。「イラクの看護師の防護マスクは、はちみつを生産する養蜂場用のマスクだ」と言うのだ。

 薬剤師の女性も「イラクではこの感染症に対して100%の準備はできていない」と心配する。「イラクは気温が高いので新型コロナウイルスの広がりは少ないと政府は言っている」と語る。保健省の職員は、感染者の多い中国などからの帰国者に対し隔離を進めていることなどを説明する。何とか努力が実ってほしいものだ。

公的医療を守れ

 映像は2020年2月に撮影された。日本やアメリカで感染者が急速に拡大した直前の時期にあたる。イラク政府の医療対策は、極めて憂慮されるものだ。

 危惧は残念ながら現実になりつつある。政府は隠しているが、日本の人口の3分の1のイラクで、4月現在で数千人の感染者がいると報道されている。

 アメリカやイタリア、そして日本、イラクでも、公的医療の破壊の下で犠牲者が急増している。イラクの市民と連帯して、公的医療を守り、個人補償を求める声を上げていきたい。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

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