2020年05月01日 1623号

【読書室/華僑二世徐翠珍的在日 その抵抗の軌跡から見える日本の姿/徐翠珍著 東方出版 本体1500円+税/いま生きる移民が見えていますか】

 1971年7月、在日華僑二世徐翠珍(じょすいちん)さんは、民営から大阪市立に移管された市立長橋第3保育園を解雇された。市の人事委員会採用要綱の「日本国籍を有するもの」という1項、「国籍条項」によって。

 産休明け、乳飲み子を抱いての「在日中国人保育労働者としての私の職場を返せ」の闘いへの支援・連帯は大きく広がった。徐さんは73年、解雇撤回・現職復帰をかちとり、外国籍公務員第1号となった。

 徐さんは1947年、神戸市で洋服仕立て職人の華僑二世として生まれ育った。本書は、父母、とりわけ母から学んだ中国人としての誇りを原点に日本社会の不条理に対する抵抗、差別されてきた人たちとの共生・連帯への希求が貫かれた「私的闘いの記録」である。

 章ごとの扉には著者自ら描いた花の画。第1章のそれはとうおがたま=B「やさしいまなざし。懐かしい母の思い出にと我が家にも植樹。毎年香る花を(母がしたように)私もティッシュに包んでみる。漢名『唐招霊』」とコメントが添えられている。

 上海から一人で日本へ渡り、日本語も全くできない中で6人の子を育て仕立て職人の夫を支えた母。「そんな母の感性の底にあったのは上海女工時代に育んだ『自立』と『民族の誇り』ではなかったでしょうか」

 退職後、学童保育所「芽」を西成地域に開設し、障がい者福祉作業所の活動を続け、「指紋押捺外国人登録証(携帯)拒否」「天皇恩赦拒否」。そしてヘイトクライムとの闘いは今も続く。

 かくして私は「『在日』日本人の非国民へのすすめ」として読み終えた。あらゆる場で民主主義を創っていく一人として。  (Y)
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