2020年05月08・15日 1624号
【新型コロナ感染症 どう向きあうべきか/症状はしつこく長引き急変します/感染リスクを具体的に把握しよう】
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新型コロナウイルスによる感染症(COVID―19)拡大にどう向きあうべきか。地域で活動する人びとの要請に応えて医療問題研究会が各地で学習会を開いている。COVID―19を科学的に理解することは、個人の健康を守るためにも、政府のごまかしを暴くうえでも必要だ。感染防止のためにどんな行動をとればいいのか。読者の疑問に答え、編集部でまとめた。
Q コロナはどれほど怖い病気ですか
COVID―19の症状をひと言でいえば、「しつこく長引き、急変する」ことです。インフルエンザに比べ回復までの期間が長く、急激に悪化することもあります。
感染した場合、死に至る率(致死率)はインフルエンザよりかなり高いようです。米国疾病予防管理センター(CDC)はインフルエンザで0・05%、コロナは1%以下になる想定をしています。感染者数が増えれば下がっていくからです。CDCの想定でも20倍程度の毒性があることになります。年齢も大きく影響します(図)。
感染力はどうでしょう。1人の感染者が何人にうつすか(基準再生産数)をみるとコロナでは2・2〜2・7。インフルエンザ(1・5)に比べ2倍近く強力です。
致死率や死亡率は国によって大きな違いが出ています(表)。感染者を見つける検査数の違いや高齢化の違い、医療体制の差などいろんな要素が反映したものと考えられます。
いずれにしても「広く感染し、重篤化し死に至る場合がある」以上、特別な対応を要する病気と言えます。
Q 薬やワクチンはないのですか
インフルエンザなど多くのウイルス感染症と同じで、治療薬はありません。政府が備蓄する「アビガン」も、効いたという中国の論文が取り下げられています(詳しくは本紙1623号)。他にもエイズ用の薬などいろいろ試されているようですが、効き目が証明されたものはありません。ワクチン開発に至っては、まだまだ先のことです。
ですから、自身の免疫力でウイルス増殖を抑えることになります。軽症者でも急激に重症化することがあるので、それに備える必要があります。
ではどんな病状をたどるのか。まず初期では発熱。厚労省は「37・5度以上の熱が4日間続く」ことを検査の基準にしていますが、熱がそれほど出ない場合もあるので要注意です。咳、倦怠感、筋肉痛、時には下痢、嘔吐、味覚・嗅覚異常などが続きます。重症化する場合、2週目までに徐々に進行し、高山に登った時のような息切れが生じます。平均8日程度で呼吸困難になり、9日で急性呼吸窮迫症候群合併症を引き起こします。酸素不足であちこちの細胞が働かなくなるわけです。治療としては、とにかく酸素を送ることになります。
Q 感染を防ぐにはどうしたらいいですか
症状が出る3日前ぐらいから他人にうつす可能性があります。症状が出てから10日間ほどはうつす可能性が残ります。症状が出ない人でも、放出されるウイルス量が少ないだけで、感染させる可能性はあります。
防護には個人ができるものと集団的に取り組むものがあります。まず個人では、約20秒間の手洗いをきっちりと頻繁に行うことです。
ウイルスは、目や鼻、口から侵入します。手で顔を触ることが感染リスクを高めます。ウイルスはドアノブや机、書類などの表面で数日生き延びます。手に付着することは避けられません。よく洗い流すことです。
集団的な取り組みとして「3密」が言われます。この効果を疫学的に証明したものはありませんが、飛沫を浴びない、空中に漂うエアロゾルを吸わないための措置ですから、「形」ではなく、具体的な状況にあわせて対応策を講じるべきです。
「休校」措置についてもその効果が証明されているわけではありません。家庭や地域の環境によっては学校に「隔離」する方が感染リスクが低いとの見方もあります。どこに感染リスクがあるのか、よく見極めることです。
いずれにしても、政府が感染の実態を把握することをしないまま「自粛」を強要するという無策、無責任な対応をしている以上、市民の合理的な判断・行動によって感染リスクを減らすことが極めて重要です。
Q 「緊急事態宣言」の問題は何ですか
補償もなく休業を迫ることは、恐怖を利用した強権支配です。やみくもに「社会のために我慢しろ」ということです。黙っているわけにはいきません。同時に、市民が自律的に感染防止対策をとる必要があります。
例えば、ソーシャル・ディスタンシング(社会的距離の確保)。感染防護策として飛沫が届かない距離約2m程度を確保する意味でよく使われるようになりましたが、反発を覚える人もいます。社会学用語としての「ソーシャル・ディスタンス」は、ハンセン病患者を差別する隔離政策から生まれたものでした。
しかし、人と人の距離をとることは感染拡大を防ぐうえでとても重要です。ですから分断ではなく、「フィジカル・ディスタンス(物理的距離)」を確保し、自分を守り、他人に感染させないという連帯感を示していくことが必要です。
弱者をつくらず、差別・分断をさせない。市民の命と生活、権利を守るために検査の拡充、休業補償などを政府や自治体に要求することは市民の一体感を作り出すことができます。
COVID―19を正しく理解し、くれぐれも感染防止の措置を怠りなく。
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