2020年05月08・15日 1624号

【これもコロナ緊急経済対策/ポイント還元拡充予算755億円/消費税は即時廃止だ】

 消費税増税で生活が苦しくなったところに新型コロナが襲ってきた。収入減少と増税のダブルパンチを受けた人びとの生命と生活を守るために、さまざまな補償策が早急に実行されるべきだ。「一律10万円給付」はあくまで始まりであり、さらなる生活の下支えのための補償が不可欠となっている。そして何よりも消費税を廃止することだ。

 ところが、コロナ禍の緊急経済対策補正予算になんとキャッシュレス・ポイント還元を拡充するため755億円が計上された。「休業」による資金繰りに四苦八苦する中小・小規模事業者にキャッシュレス決済端末導入を促そうというのだ。あくまで消費税10%を維持・継続するつもりだ。

 消費税増税は、ポイント還元の他、軽減税率やプレミアム付き商品券など「需要落込み緩和策」が実施されたにもかかわらず深刻な影響を与え、デパートや大型スーパーなどの倒産・閉鎖を多発させている。


コロナがとどめ

 山形県に創業320年を誇る老舗のデパート大沼がある。その大沼がコロナの影響が出る前の1月に自己破産に追い込まれ、従業員全員を解雇した。代表取締役は、「昨年の消費税増税以降は売上高の減少にさらに拍車がかかる事態となり、その結果資金繰りも危機的状況にあった」と説明している。「コロナ倒産」ではない。「消費税倒産」だ。コロナはとどめを刺したに過ぎない。

 大沼だけではなく全国でデパートや大型スーパーの閉店が続いている。ここ1年間で17店舗が閉店となった。今後も高島屋やそごう、西武などが閉店を予定している。また、外食や自動車などで売上高の大幅な減少が続いている。



 その結果、昨年10〜12月期のGDPが年率7・1%のマイナスとなってしまった。民間需要のすべての項目がマイナスであり、消費税増税に賛成の学者さえ「2〜3%程度の増税でこれだけ落ち込むのは一般的にはあり得ない」と驚きをかくさない。これらはすべて、コロナの影響が出る前のことだ。

 これまで政府は、景気悪化を認めようとせず「回復」と唱え続けてきたが、3月の月例経済報告では「厳しい状況にある」と書かざるをえなかった。深刻な事態を隠せなくなったのだ。

 消費税が8%に引き上げられた2014年、その後消費は回復せず落ち込んだままだった。そんな状況の中で10%引き上げを強行すればさらに消費が抑制されるのは当然のことだ。消費税増税に対し、世界は辛辣な言葉を投げかけた。英国の経済誌「エコノミスト」は「最大の経済的愚策を繰り返した」「この誤りは予見できた」(2月17日)と論評し、米国の新聞「ウォールストリート・ジャーナル」(2月18日)は「日本の消費税の大失敗」と題した社説を載せた。だれの目から見ても「してはならない政策」だった。

二重苦の解消を

 消費税8%引き上げ前の13年と10%引き上げ後の19年11月の実質家計消費支出(2人以上の世帯)を比べると、年31万円以上減少している。この間の賃金は低迷したままなので、当然ながら消費は伸びない。消費が減ると供給が過剰となり、企業は設備投資を控えるようになる。設備投資減少は雇用減と賃金引き下げを引き起こす。雇用と賃金が不安定になると消費が減る。この繰り返しが経済全体を低迷させる。

 ここにコロナで需要減少に拍車がかかり、解雇・操業停止など供給の強制的縮小が加わった。今後、恐慌の可能性があるともいわれている。この連鎖を断ち切るには需要を喚起する以外にない。賃上げし、消費税を廃止することだ。

 「社会保障のための消費税」論のウソは知れ渡った。消費税収は社会保障のためにほとんど使われておらず、法人税と所得税の減税補てんの財源になった。今では安倍政権支持者でも口にする。そして、補償のない休業要請に対して消費税廃止の声が高まっており、廃止の展望がある。

 増税と新型コロナという二重苦を解消させるための緊急補償対策にとって、消費税廃止は効果的だ。生命と生活を守るため廃止を実現させよう。
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