2020年05月08・15日 1624号

【放射能汚染水放出に憤る福島県民・農林漁業者/パブコメに反対意見集中を】

 福島原発事故の影響で増え続ける「処理水」(放射能汚染水)。政府・東京電力はALPS(多核種処理装置)で放射性セシウムなどの放射性物質を除去後「どうしても取り除けないトリチウムだけを残した処理水を環境(海洋または大気)中に放出したい」とする。だが多くの市民は「ALPSは不完全で、多種多様な放射性物質の完全除去は不可能」と指摘する。また、政府・東電が無害と主張するトリチウムも健康被害を引き起こす可能性がある。

 汚染水タンクが満杯となる時期が迫り、増設の余地もないとして早期「放出」を狙う政府・東電に対し、市民は健康被害の危険性はもちろん、タンク増設は可能だとして放出に反対。保管継続を求めてきた。

 政府による意見聴取会は県内自治体や企業、農林漁業者団体を対象にこれまで2回開催された。市民の意見は聴かない不当で非民主主義的な手法だが、それでも放出に賛成する意見はもちろん、やむを得ないとする意見もなかった。聴取会を汚染水放出に向けた「環境整備」の場にしたいという政府の思惑は外れた。

 4月6日の第1回聴取会では、野崎哲・福島県漁連会長、秋元公夫・福島県森林組合連合会長が明確に反対を表明。「震災後に漁業参入した若い後継者の将来を約束するためにも放出に反対」(野崎会長)とし、県外漁業者からの意見聴取も求めた。

 4月13日、2回目の聴取会では菅野孝志・福島県農協中央会長が「海洋放出か大気放出かの二者択一の議論に反対」と結論ありきのセレモニー的「聴取会」を批判。「農業生産が行われる大地と山、川、海はつながっている。海洋放出も大気中放出も実態は同じ」と明快だ。放射能汚染に伴う県内農業者の苦悩を代弁、良識を示した。全国農協中央会も脱原発を目指す運動方針を採択している。

市民の声で断念へ

 聴取会を開催した資源エネルギー庁は今、この問題でのパブリック・コメントを受け付けている(5/15まで)。環境省が狙っていた福島県内での放射能汚染土の再利用が、2800件もの反対意見で見送られた例もある。市民の意見は無力ではない。反対意見を集中させ断念に追い込もう。

パブリック・コメント宛先

多核種除去設備等処理水の取扱いに係る関係者の御意見を伺う場及び書面による御意見の募集について(経産省)

◆Email takakushu-iken@meti.go.jp(「書面による意見提出」と件名記入)

◆FAX 03-3580-0879 「廃炉・汚染水対策チーム事務局」宛)

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