2020年05月08・15日 1624号

【沖縄辺野古 コロナ感染で新基地工事中止 調査もせず設計変更を申請 不承認で計画撤回だ】

 新型コロナウイルス感染は、ついに沖縄県名護市の辺野古新基地建設工事現場まで広がってきた。

作業員が感染

 4月16日、海上作業を請け負う作業員1人が感染。米軍キャンプ・シュワブ内の建物で濃厚接触したと考えられる同僚の作業員14人が自宅待機となり、沖縄防衛局は17、18日の作業を中止した。

 政府の緊急事態宣言をうけ、鹿島建設、大林組などゼネコン大手の多くは5月6日まで全国の工事を止める方針を発表していた。ところが、辺野古新基地建設を請け負う大成建設などは、コロナ感染などどこ吹く風とばかりに新基地建設工事を続けていたのだ。

 感染者が出たことから、玉城デニー沖縄県知事は4月17日、菅官房長官に工事の中止を申し入れた。それでも沖縄防衛局は「工事中断はキャンプ・シュワブ内であり、シュワブの外や安和(あわ)桟橋(名護市)や塩川港(本部〈もとぶ〉町)は対象ではない」とし、土砂搬送作業は17日も続行されていた。

 沖縄では4月に入ってコロナ感染者数が急速に増えていた。新基地建設阻止を求める「オール沖縄会議」も、「命を守る」ことを最優先し、15日からゲート前行動などすべての阻止行動を「苦渋の判断」として中止していた。

 そして週明けの20日、沖縄防衛局は、21日以降当面の間は工事は中止することを正式発表した。県内のコロナ感染拡大の深刻さからすれば、はるかに早い中止判断が必要だった。「不要不急」ばかりか、民意に反し違法を重ねる工事などそもそも行ってはならない。

変更申請を突然提出

 当面の工事中止が発表された翌4月21日午前8時半、沖縄防衛局は、事前連絡もなく、名護市にある県北部土木事務所に軟弱地盤などに伴う辺野古新基地建設の設計変更申請を突然提出した。それも防衛局職員が書類をカウンターに置き数分で立ち去るというあきれはてたもの。新基地関係書類の県への提出は、常に異常な方法だ。防衛局自身、筋が通らないことがわかってるから、このような形でしか書類を提出できない。

 同日正午前、玉城知事は会見で「対話に応じず県民に十分な説明をしないまま、工事の手続きを一方的に進めるのは到底納得できない」と反発し、「新型コロナウイルス対策で一丸となって取り組む時だ。その中での申請はスケジュールありきで遺憾だ。断じて容認できない」と批判した。

 この変更申請は、海底70メートルの地盤改良や護岸完成前の土砂投入など、大規模な設計と工法の変更が含まれているにもかかわらず、環境影響評価(アセスメント)のやり直しや、追加のボーリング調査を拒んでいる。御用学者らによる有識者会議が必要なしとした「お墨付き」を理由に開き直っている。


司法も「アセス必要」

 一方、4月13日、県の埋め立て承認撤回を取り消した国土交通相の裁決を違法として辺野古住民15人が裁決取り消しを求めた訴訟で、那覇地裁は11人について訴訟を起こす適格性(原告適格)を認めず訴えは却下したが(4人は適格を認め継続)、判決の中で「設計変更の際、改めて環境影響評価を実施する必要がある」と注目すべき見解を示した。

 県は、申請内容について、標準の処理期間は44日間だが、大規模な追加工事のため「専門家からの意見や申請の適合性を含めて慎重かつ精緻な審査が必要」との考えを示した。

 軟弱地盤を認めながら、その地盤調査をすることもなく変更申請するという政府の暴挙。新基地建設計画そのものが破綻している。変更申請を不承認とし、安倍政権もろとも工事計画を葬り去ろう。   (N)

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