2020年05月08・15日 1624号

【「緊急事態」口実の権利侵害許すな/コロナ労働相談に答える】

 新型コロナウイルス感染症に関する労働相談が急増しています。なかまユニオンに寄せられた事例をQ&Aで紹介します。

◆ホテルのフロントで働いているが、勤務日数を減らされ、1日の時間も2時間カット。その分有給休暇を充当すると言われているが納得いきません。(正社員女性)

 全国で緊急事態宣言が出され多くの事業が休止を強制されているような雰囲気が作られていますが、法律上、実際は事業の休止を強制できません。

 あくまで使用者側の都合により休ませていることになるので、民法536条2項を根拠に100%の賃金補償を要求できます。最低でも、労働基準法26条により、平均賃金の100分の60以上の休業手当を支払わなければなりません。このとき、従業員の意思によらず、年次有給休暇を一律に取得させることは違法です。

 このような場合、雇用主は「雇用調整助成金」を申請できます。新型コロナウイルスに関する特例措置に伴い、助成対象労働者は非正規・アルバイトへ拡張され、助成率を引き上げ、小規模事業所では100%補償となっています。労働者の賃金をカットする必要はまったくありません。

安全対策は自己責任?

◆私の働くホテルは海外からの帰国者の一時滞在場所になっています。病気になるか分からないが自己判断でやってほしいと言われています。(40代女性)

◆消毒液もマスクもなく、まったく安全対策なしでとりあえず乗車せよと言われています。(正社員タクシー運転手)

◆通所型介護施設で働いている看護師です。安全対策が全くされないので休もうと思っています。構いませんか。(パート看護師)

 最初の相談の場合、自己判断でやってくれという業務命令に従って休業し、当然賃金は要求すべきです。命を守ることが第一です。

 事業者には、労働契約上、労働災害等を防止する義務があり、また、快適な職場にするよう努める義務があります。これを使用者安全配慮義務といいます。

 タクシー労働者の相談には、消毒・マスク・前後部隔離シートなどを書面で要求すること、50人以上の事業所なので労働安全衛生委員会開催を要求することなどをアドバイスしました。

 それでも事業主が安全配慮をせず、やむを得ず職場を欠勤しても、これを理由に懲戒したり解雇したりすることは無効となります。

◆会社が「在宅勤務中は出社できないのだから賃金を減らす」と言ってきました。これは仕方がないことでしょうか。(男性)

在宅賃下げは違法

 在宅勤務は会社も了解のことですから、賃金を会社の都合で一方的に減らすことは違法で許されません。仮に、一度、在宅勤務中の賃金減額に形式的に合意してしまったとしても、労働者が自由意思に基づいて合意したものと認められる合理的な理由がないと、その合意は労働者の真意に基づかないとされ無効であるとされる場合もあります。

 テレワークが声高に推奨される中で、賃金引き下げが行われれば、低賃金テレワーク労働者の急増が予想されます。新型コロナ禍を口実にした賃金引き下げは絶対に許してはなりません。

 *   *   *

 ユニオンへの労働相談は続いており、今後、企業倒産・解雇なども出てくる可能性が大きいと思われます。いずれにせよ「緊急事態」を口実にした労働者の権利侵害には断固として抗議し、要求を明確に突きつけることが今求められています。

なかまユニオン
TEL 06-6242-8130
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首都圏なかまユニオン
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