2020年05月08・15日 1624号

【廃炉逃れに必死の電力会社 「活断層隠し」の悪あがき】

 原子力規制委委員会(以下、規制委)が2016年2月に定めた原発新規制基準では、直下に活断層がある立地での原発の稼働を認めていない。電力会社は、活断層の存在を否定しようと、不利になる調査はせず、データを書き換えるなど、悪あがきを重ねている。

活断層調査しない四電

 1月17日に広島高裁が伊方原発(愛媛県)の運転差し止め仮処分を出した理由の1つが、活断層問題だった。

 四国電力は、本州―九州の大断層帯である中央構造線は伊方原発の8`沖にあると主張している。かつて四電と当時の保安院が音波で海底の構造を調べた解析図には、岸から2・5`以遠しか描かれていなかった。



 独自に調査研究を続けている小松正幸・元愛媛大学長は、岸から600b沖に実際の中央構造線が走っており、それは活断層かもしれないと疑っている。小松さんの調査によると、佐多岬半島の北岸はどこも切り取られたように揃っており、海底が沿岸から急に深くなる。これは活断層によくある形だ。また、別府湾の海底地形は「半地溝(ハーフグラーベン)」(図)で堆積物が比較的新しい。これは、中央構造線が最近動いた可能性を示している。伊方沖の海底のへこみも、中央構造線を境界断層とするハーフグラーベンであることが予想される。



 小松さんたちは規制庁に物理探査(原発地下の三次元探査)を要請したが、まだ実現していない。だが、こうした調査研究は、国の地震調査研究推進本部にも認められ、中央構造線の長期評価改訂版(17年12月)には、「伊予灘南縁、佐田岬半島沿岸の中央構造線については、現在までのところ探査がなされていないために、活断層と認定されていない。今後の詳細な調査が求められる」と記載された。

 広島高裁判決では、きちんと調査もしないまま適合性を認めた規制委の姿勢も指弾された。

 物理探査の専門家である芦田譲・京都大名誉教授は、以前から敷地内に活断層がある可能性が指摘されている関西電力の大飯原発(福井県)3、4号機も三次元探査で調べるべきだと訴えている(2/1東京新聞)。

データ書き換えの原電

 2月7日に行なわれた規制委による日本原子力発電(以下、原電)の敦賀原発(福井県)2号機の適合性審査で、原子炉直下に活断層があるかどうかの判断に必要な調査資料の記述を原電が書き換えていたことが発覚した。

 12年に敷地内で実施したボーリング調査結果について、18年の審査会合に提出された資料では「未固結」(地層が固まっていない状態)となっていた箇所が、今回は「固結」(地層が固まった状態)に書き換えられていたのだ。

 敦賀2号機を巡っては、規制委の有識者調査団が15年に原子炉建屋の直下に活断層があるとする報告書をまとめた。廃炉が濃厚となったが、原電は反論し、再稼働に向けた審査を申請していた。日本活断層学会の佐竹健治会長(東京大地震研究所教授)は「硬い層の間に柔らかい層がある場合、断層の活動性を表す」(2/13毎日)と指摘する。原電は、都合の悪いデータを改ざんして、廃炉を免れようとした。

 規制委員も「この資料を基に審査はできない」となり、審査会合は即時打ち切りとなった。

 原電の所有する4基のうち2基は廃炉が決まった。東海第2原発(茨城県)は適合性審査には合格したが、周辺自治体の同意取り付けが難航している。現在は、電力5社からの支援でかろうじて存続している状態だ。不正行為までして「廃炉」という結論をひっくり返そうという原電に原発を扱う資格はない。

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 泊原発(北海道)でも、「敷地内の断層は活断層ではない」との北海道電力の主張は認められず、年内に再度現地調査となり、審査は長引く見通しだ。
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