2020年05月08・15日 1624号

【フードパントリーは溺れそうになった時の“浮き輪” 東京・足立区】

 この2月、8世帯の利用からスタートを切った千住フードパントリー。毎月少しずつ利用者が増え、4月は21世帯の利用となった。毎回チラシを約千枚ポスティングし、配布したエリアから新規の申し込みが入る。

 「旦那がね、死んで2年ほどだけど喧嘩ばかりしてたのに、今思い出すのは楽しかった思い出ばかり」と、お一人暮らしで高齢の方はスタッフとのおしゃべりを楽しむ。「100%果汁のジュースなんて普段買ってあげれないけど、先月もらったのを子どもが美味しいって喜んでた」とひとり親の方。4月に初めて利用した男性は「中学生の子どもがいるがコロナの影響で離職となってしまった」と言葉少なに苦労を語っていた。

 ともにつくる会・東京事務局長の石島孝さんは、パントリーの存在意義が増していると強調する。「パントリーは世相を映す鏡。コロナの影響で、30万給付はおろか10万円すらいまだ手にできず、窮乏にあえぐ人が増えている。溺(おぼ)れそうだから、『浮き輪』の役割として食の支援に手を伸ばす人が殺到している状況だ。1日で新規申し込みが12件入り、5月はすでに32件の申し込みがある。こうした実態をもって行政に経済対策をちゃんとやれと迫っていきたい」

 区がひとり親世帯に送ったパントリーの案内を見て、普段の3倍、4倍の申し込みがある。フードバンクからも「開催回数を増やせないか」と求めがあり、5月に追加開催を準備している。

 近頃は区からもフードバンクを通し食品提供を受けたり、他のパントリーでうちの案内を流してくれたりと、地域にネットワークができつつあると感じる。

 千住パントリーはコロナ禍における地域のセーフティーネットの一つとして役割を発揮している。

(平和と民主主義をともにつくる会・東京 土屋のりこ)

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