2020年05月08・15日 1624号

【進行する医療崩壊/パンデミックから命を守る/検査体制の抜本強化 医療資材の緊急確保を】

 都内の基幹病院で院内感染の報告が相次いでいる。多くの医師・看護師が自宅待機となり、外来診療や新規入院が停止・制限され、救急車受け入れ中止・手術延期の事態が広がる。15の特定機能病院(高度医療を担うとして国の承認を受けた病院)もすべて外来診療や手術を制限している。

N95マスク使い回し

 このうち一つの病院は、都からの重症・中等症者入院受け入れ要請に応え、ICU(集中治療室)8床をコロナ専用とし、中等症者用30床もほぼ満床に。救急救命用20床はICU代替機能を持つこととされ、手術件数は50%減った。

 サージカルマスク(医療用マスク)やN95マスク(飛沫の侵入を防ぐ高性能マスク)、防護エプロンの不足も著しい。とくにN95マスクは、これまで患者一人に対応するごとに廃棄していたが、今は再消毒して使い回している状態だ。

 患者への感染という意味での院内感染はこの病院では発生していない。しかし、市中感染でPCR検査陽性となった看護師らがおり、医療者の感染拡大は大いに懸念される。重症患者の医療チームの医師は「家に帰れない。家族への感染が心配だ。ホテルなどの宿舎を」と要望する。

 コロナ病棟からの退院支援も始まったが、転院や自宅療養への移行は簡単ではない。2週間入院すると歩行機能が衰え、歩けなくなる人がいる。介護サービスが足りず自宅に戻ったら生活できない人がいる。こうしたニーズに対する行政の支援はきわめて手薄だ。

財政措置なしが元凶

 自宅待機・療養中の死亡が後を絶たない。都は自宅待機・療養者の人数について「調査中」と実態把握さえ後回しにしている。

 PCR検査はどうか。新宿区は4月15日、区医師会などと連携し、感染疑いのある人が検査を受けやすくする目的で「新型コロナ検査スポット」を設ける、と発表。しかし、スタッフが十分そろわず、開始は4月27日以降にずれ込んだ。これも検査の要員・体制に対する国や都の財政措置がないことに起因する。

 ZENKO(平和と民主主義をめざす全国交歓会)東京北部実行委員会は4月29日、集会「パンデミック・コロナ恐慌から命の生活を守ろう」をオンライン開催する。東京都に「公費で検査体制を抜本的に強化し、必要とする人に無償で検査を行うこと」「サージカルマスク、N95マスク、ガウン等防護のための医療資材を緊急確保すること」などを要求していく。

 同実行委の一人は「補正予算案に感染収束後の消費喚起策『Go To キャンペーン』1・7兆円。市民が先の見えない暮らしを強いられているときに、本当に腹が立つ。そのお金は今緊急に必要な検査・医療充実に回せ」と話している。

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