2020年05月22日 1625号

【1625号主張 緊急事態宣言=人権制限でなく/医療へ補償へ国費出動を】

「37・5度4日」撤回

 加藤勝信厚生労働相は、帰国者・接触者相談センターに新型コロナウイルス感染を相談する目安「37・5度以上の発熱が4日以上続く場合」を撤回し、「比較的軽い風邪の症状が続く場合」はすぐ相談するよう改めた。体温等が条件に当てはまらずPCR検査を拒否されたという多くの批判や、容態急変の症例が相次ぎ死に至るケースも発生した事実の前に、変更を余儀なくされた。遺族は「私たちはコロナの犠牲者ではない。偉い人たちが考えた基準によって犠牲になった」と訴える。安倍政権の罪は重い。

 検査基準自体は変更されず一部「37・5度以上」の目安は残るものの、医師が判断して検査に結びつけることは可能であり、市民が声を上げて検査の間口を広げた意義は大きい。

 今すぐ相談・検査・医療体制を抜本的に拡充し、医師が必要と判断した者や濃厚接触者が即時検査を受けられるようにしなければならない。医療・福祉、食料品等の生産・流通・販売、公共サービスなど市民生活に不可欠で危機の最中も日々働かざるをえない労働者たちにも、感染防護・危険手当支給とともに検査を受ける権利を与えるべきだ。

安倍の支配揺らぐ

 政府の専門家会議でさえ、検査が増えない理由として検査を担う地方衛生研究所の体制未整備や保健所の業務過多など、公衆衛生行政の不備を挙げた。安倍首相と対談した山中伸弥・京大教授は「自粛要請により在宅している研究者を活用すれば、検査能力は10万件にも拡大できる可能性がある」と政府の無作為を指摘。安倍は新型コロナによる死者数が「少ない」ことを強調するが、日本法医病理学会は、解剖医がコロナ感染の疑いを判断した死亡者のうち検査を拒否されたケースが半数を占めるとのアンケート結果を公表している。

 世論調査も、医療・検査体制に「不安を感じる」は68%に達し、内閣不支持率45%、支持40%と前回(4/8)から逆転(5/6毎日)。無策・無責任のあらわな安倍の支配は揺らいでいる。

声を上げればかちとれる

 安倍政権が延長した緊急事態宣言は、市民の民主的諸権利剥奪と批判封じ、補償無き「自粛」強要であり、感染拡大防止の有効な対策とはなっていない。

 市民が声を上げることで、保健所を介さないPCR検査センターの仕組みができ、「37・5度4日以上」が撤回された。市民一律10万円給付が実現し、第2次補正予算では雇用調整助成金や家賃・学生支援などが拡充されようとしている。

 ZENKO(平和と民主主義をめざす全国交歓会)が呼びかけるコロナ対策緊急署名を集め、政府・自治体に要求を突きつけ、検査・医療体制の拡充とすべての損失補償をただちに実行させよう。

 (5月10日)
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