2020年05月22日 1625号

【検察庁法改悪案、与党が審議強行/保身に走る安倍がゴリ押し】

 検察官の定年を引き上げるとともに、政府の判断で定年を延長できる規定を新たに設ける検察庁法「改正」案の審議が始まっている。政府は今国会での成立をもくろんでおり、自公と維新だけで衆院内閣委員会での質疑を強行した(5/8)。

 法案は、▽検察官の定年を63歳から65歳に延ばす(検事総長の定年は今でも65歳)▽63歳になったら検事長や検事正などの幹部ポストに就けない「役職定年制」を設ける▽ただし、内閣や法相が必要と認めれば、特例でその職を続けられるようにする(最長3年間)――というもの。

 こんな改悪が実現すれば、政府の息のかかった検察官は役職にとどめ、そうでない者は役職から降ろすことが可能になる。まさに、時の政権による検察人事への介入を合法化しようというのである。今年1月に閣議決定した黒川弘務・東京高検検事長の定年延長を後付けで正当化するものだ。

検察支配狙う

 「安倍官邸の番犬」との異名を持つ黒川は、法務官僚として検察の事件捜査に圧力を加え、甘利明経済再生相(当時)の口利きワイロ事件や森友学園をめぐる財務省の公文書改ざん事件を不起訴処分にしてきた。その黒川を安倍官邸は検察トップの検事総長に据えようとした。そのために、検察官の定年を定めた検察庁法の規定を「解釈変更」で捻じ曲げたのである。

 そして今回、法律そのものを変えようとしている。検察官の中立性(政権からの独立)を保つという法の趣旨を根底から覆そうとしているのである。

 野党側は「新型コロナ感染症対策に全力を尽くすべきさなかに、火事場泥棒的に押し通そうなど、断じて許されない」と猛反発している。当然だ。官邸とて、「不要不急」との批判を浴び大炎上することぐらいわかっていたはずだ。

 それでも強行したのは、急がねばならない事情が安倍晋三首相にはあるとみるべきだ。森友学園事件、「桜を見る会」の一件、河井案里参議院議員の陣営による選挙違反事件など、安倍首相は自分の政治生命に関わるスキャンダルを多々抱えている。これらを「不発」に終わらせるために、検察組織の首根っこをつかもうとしているのだ。

ツイッターで抗議

 検察法改悪策動に対し、反対の声がツイッター上で高まっている。著名人や芸能界にも広がっており、俳優の井浦新(あらた)さんが「もうこれ以上、保身のために都合良く法律も政治もねじ曲げないで下さい。この国を壊さないで下さい」と投稿すると、「いいね」が11万件以上ついた(5/13現在)。

 安倍政権が検察庁法改悪で狙うのは「国家私物化の完成」だ。コロナ対策よりも自分の保身を優先する卑劣漢をこれ以上のさばらせてはならない。

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