2020年05月29日 1626号

【ミリタリーウオッチング 軍事費850億円を削った韓国/日本もコロナ対策に金回せ】

 新型コロナをめぐる緊急対応が一定の「おちつき」に至った先で、改めて問い直すべき社会の課題は多い。国の予算配分の問題もその一つだ。「軍事費削って暮らしに」は私たちの一貫した主張だが、残念ながら安倍政権下では軍拡の一途だ。

 そんな中、「軍事費削って、コロナ対策に」の動きが実際に現れた。韓国政府は7兆6千億ウォン(約6700億円)規模の新型コロナウイルス感染症緊急災害支援金(全世帯に支給)の財源を用意するために、今年の国防予算50兆2千億ウォン(約4兆4千億円)から9897億ウォン(約850億円)を削減することを決めた。

 第2次補正予算(4/16)で、F35A戦闘機3千億ウォン(約260億円)、海上作戦ヘリコプター2千億ウォン(約170億円)、広開土―Vイージス艦事業1千億ウォン(約85億円)など外国製武器購買予算から契約や試験評価が遅延している事業の支出を減らす。軍施設と鉄道投資事業も先送りや削減で資金を節約するという。

 莫大な軍事費からすれば850億円は約2%程度で、しかも来年への「先送り」だが、世界でこうした措置に踏み切るのは、今のところ韓国政府だけである。これを韓国の「緊急的例外措置」にとどまらせず、世界に共通する要求として広げることが極めて重要だ。

 韓国政府の動きの背後に市民の声がある。ロウソク革命で大きな役割を果たした韓国最大の市民運動団体・参与連帯は4月8日、「増え続ける国防費を大幅に削減し、新型コロナウイルスの被害克服のために投入すること」を求める声明を発表している。

 声明は、新型コロナウイルスの世界的拡散という歴史的な事件を前に、「緊急的例外措置」にとどまることなく、「国家の安全保障」と「人間の安全保障」の関係を見直すという世界的で根本的な問題提起をする。さらに「攻撃用」兵器を買うための予算を削減するよう求める。その額は16兆6804億ウォン(約1兆4900億円)である。

軍縮へ新たな機会

 ひるがえって日本はどうか。辺野古新基地建設の総額2兆5千億円(沖縄県試算)。イージスアショア2基で総額1兆円。F35は147機で6・2兆円。オスプレイ、グローバルホーク、さらに南西諸島への自衛隊基地建設と、文字通り不要不急≠ナある予算の執行を止める気配は全くない。

 「軍事費削って、コロナ対策に」。世界共通の言葉と要求が今リアリティーを持つ。「ポストコロナ」をも見すえ、世界を軍縮へと導く新たな機会とすることが必要だ。

豆多 敏紀
平和と生活をむすぶ会

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