2020年05月29日 1626号

【検察庁法改悪、今国会阻止/市民の怒りが安倍を止めた】

 安倍晋三首相は検察庁法「改正」案の今国会での成立を断念した。「野党や世論の批判を押し切って採決に踏み切れば、内閣にとって大きな打撃になりかねない」(5/18読売)と判断したからである。

 「改正」案の眼目は、内閣の判断で検察幹部の「役職定年」を延長できるようにすることにあった。検察人事に政治権力が介入することを正当化し、政権の意に沿わない動きをを封じ込めようとしたのである。

 「国家私物化」の完成を狙う暴挙に多くの市民が危機感を抱き、外出自粛が続く中で行動した。一人の市民が始めた「ツイッターデモ」は瞬く間に拡大。多くの著名人や芸能人も抗議の意思表示に加わった。

 元検事総長を含む検察OBからも反対する意見書が提出された。意見書は安倍政権の姿勢を「『朕(ちん)は国家である』との中世の亡霊のような言葉をほうふつとさせる」と痛烈に批判。英国の政治哲学者ジョン・ロックの言葉を引き、「法が終わるところ、暴政が始まる」とも指摘した。

 コロナ関連の休業補償や現金給付が遅々として進まぬ中、自分の保身のための法律を大急ぎで作ろうとするなんて、暴政の極みというほかない。生存権無視の火事場泥棒政権に市民の怒りが渦巻いている。

 朝日新聞の世論調査(5/16〜5/17実施)によると、「改正」案への「反対」が64%と、「賛成」15%を圧倒した。そして内閣支持率は41%から33%へと急落した。このうねりに政府・与党はおそれをなし、撤退を余儀なくされたのだ。

 政府は法案を継続審議にすることで次期国会での成立に望みをつないでいるが、世論をなめてもらっては困る。「先送り」ではなく廃案だ。最低最悪政権の命運は尽きた。「次のチャンス」などないのである。
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