2020年06月05日 1627号

【コロナ解雇は絶対ノーだ 生活保障の責任は企業と政府 ロイヤルリムジン大量解雇事件】

 東京に本社を置く「ロイヤルリムジン株式会社」が4月6日、グループ企業の事業を休止し600人を一斉に退職させると発表したことは、コロナ禍による労働者の大量解雇事件として衝撃を与えた。

 金子健作同社社長名の社内文書には「当社は生き残りをかけ、一旦事業を休止することを決断しました」「混乱の中少しでも早く、皆様が円滑に失業手当をもらえるために決断した次第」「タクシー事業の休業補償は歩合給と残業の給与体系のため、失業手当より不利」「完全復旧した暁には、みんな全員にもう一度集まっていただき、今まで以上に良い会社を作っていきたい」と書かれていた。

 これに対し、ネット上では「目からうろこ」「そんなやり方があるとは」などと称賛するコメントが流れ、美談≠ニして取り上げる報道まであったが、とんでもないことだ。

 会社は、解雇通告をしておきながら、解雇予告手当を支払いたくないために、「『退職同意書』に署名しないと離職票を出さない」と労働者の困窮に付け込み、労働者の意に反する「退職同意書」を集めた。

 朝出勤したらいきなり「明日から事業を休止するから来なくてよい」というのは、明らかに解雇だ。

 ロイヤルリムジングループ会社は、社会的公共性を放棄し、休業手続きによって雇用を維持する努力をまったくしなかった極めて無責任な企業である。

 解雇された労働者は、労働組合に加入し、未払い賃金獲得、事業の再開、解雇撤回を勝ち取っているが、失業給付の保証などの課題を抱えて闘いを続けている。

最低限の生活保障を

 そんな中、5月8日、加藤厚労相は、政府が休業中の労働者に失業手当を支給する「みなし失業」の適用について検討を始めたことを明らかにした。「みなし失業」適用は、一部の労働組合や支援団体などが各政党に働きかけていたものだ。

 通常、失業給付は、離職して失業状態の人に支給される。「みなし失業」は、休業を余儀なくされ給与を受け取れなくなった人について、離職していなくても失業しているとみなし、失業給付を受給できるようにする雇用保険の特例措置だ。東日本大震災時に適用された例もある。もちろん、本来の休業手当を100%支給させることが優先されなければならないが、政府も最低限の生活保障へ様々な対応をせざるをえなくなっていることを物語る。

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 リムジン事件から見えてくるのは、解雇は絶対に許してはならないこと、コロナ禍の労働者の生活保障は企業と政府に100%要求することだ。

 
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