2020年06月05日 1627号

【スーパーシティ実現許すな/「ドラえもんの世界」は人権・自治破壊の街】

 コロナ危機の陰に隠れて、安倍政権は地方自治破壊の法案「国家戦略特区改正案」(スーパーシティ法案)を5月27日、可決成立させた。

 スーパーシティとは「AI(人工知能)やビッグデータを活用し、社会のあり方を根本から変えるような最先端の『まるごと未来都市』」なのだという。「規制緩和」の旗振りをしてきた元閣僚で人材派遣会社を経営する竹中平蔵が座長を務めた内閣府「スーパーシティ構想有識者懇談会」。その最終報告(19年2月)は「複数の規制を同時に緩和してつくる」とうたう。

 どんな街になるのか。車は自動走行し、店舗は無人化。買い物は手ぶらで顔認証によるキャッシュレス決済。ドローンを使った自動配送、満杯になったゴミ集積箱をセンサーが感知し自動回収。AIやロボットによる遠隔診療・遠隔介護・遠隔教育等々。「まるでドラえもんの世界」。こんな都市を10年後に実現すると意気込んでいる。

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 「便利そう」に見えるスーパーシティだが、問題だらけだ。第1に人権侵害の監視社会を招く。行政や民間の持つさまざまな個人情報がビッグデータとして集積・管理される。法案では、個人情報を「推進機関」に提供する義務が盛り込まれ、マイナンバーとあわせれば、個人情報の侵害や犯罪が起きる可能性は高い。政府による監視社会を招く危険性がきわめて大きい。

 「推進機関」は国・自治体・民間で構成される都市運営全般を統括するものだが、中心的役割は民間企業が担う。カナダ・トロントでは、グーグルが同様の「未来都市」を手がけたが、収集されたデータは匿名化されず、個人を特定できる疑念が発覚した。市民は訴訟を提起し、事業撤退に追い込んだ。教訓とすべきだ。

 第2に、住民自治の解体や自治体運営の民営化を招く危険性がある。「推進機関」の下で、自治体と議会が実質上、都市運営に関与することが困難になるうえ、総務省「自治体戦略2040構想」(公務員の半減化等)と連動し、「小さな自治体」を加速する。

 第3に、グローバル資本の儲け口にしかならないことだ。監視カメラ、センサーなど膨大なインフラ整備による大きな市場をつくり出すが、地場産業はほったらかし。地域経済の活性化策はなく、弱肉強食のルールがあるだけだ。結局、地域は疲弊する。

 第4に、スーパーシティは災害に弱い。街を動かす電源が災害時確保できるのか。現在でも足りない防災職員が削減されては災害時に対応不能となる。

 国家の「成長戦略」に位置づけられたスーパーシティ構想は儲け第一で人権や自治を顧みない。スーパーシティの実現を許さず、安心して暮らせる地域社会をつくるために声を上げよう。

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