2020年06月05日 1627号
【コロナ禍 命と生活を守る介護現場は元気を出してもらえたら 小規模事業所・訪問介護の実態と思い】
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新型コロナウイルス禍の現在、大阪市内にある小規模事業所の訪問介護スタッフAさんに介護現場の状況と思いを聞いた。
コロナが深刻な影響
この事業所の訪問介護部門では、約25人の利用者に対して、スタッフ3人が1日あたり4〜6軒を回り、それぞれ30分〜1時間ずつ訪問介護している。
利用者は今どのような状態に置かれているのか。
腰痛のために歩行困難となった80歳台後半のFさんは、高校生の孫と同居。毎朝・夕のオムツ交換や毎週月曜の掃除の他、買い物や洗濯物がたまっている時には介護時間を追加する。
有料老人ホームに入居している80歳台前半のOさん。主たる介護者である妻は自身の体力の衰えもあり、ヘルパーが毎週木曜に布団干し、買い物、掃除。土曜には入浴介助、ふろ掃除を行っている。
Oさんはコロナの影響で、ここ3か月は病院、理髪店、銀行などにも外出できず、一気に足の筋力が衰え、痩せ細ってきた。この状態が続けば、訪問介護で介助しての入浴が継続できるかどうかも危うくなる。
テレビでコロナ関連のニュースが溢れる中、Oさんの介護に追われる妻は、軽いうつ状態になってしまったという。
感染させないために
Fさんには間質性肺炎の持病がある。
そのため、訪問介護するヘルパーがコロナを伝染させてはいけないと何より気を使う。防護服代わりの雨合羽、マスク及び花粉症のメガネ(フェイスシールドの代用品として)を着用し、訪問を続けている。
OさんもFさんも、介護がなければ生活が成り立たない人たちだが、コロナによる制限により、今まで可能であったことができなくなってきている。
コロナの感染防止対策として、ヘルパーは毎朝検温し、以前以上に手洗いを頻繁に行っている。また、ヘルパーと利用者はともにマスクを着用。訪問時は常に換気しながら、利用者の体温を検温し、会話時もなるべく距離を開けるようにしている。
訪問介護を行うスタッフが知らない間に利用者を感染させないために、マスク、手洗い、うがい、手指アルコール消毒を徹底している。しかし、一番基本的なアルコールとマスクが、容易に手に入らない。
アルコールは、企業が配布したものがあり、マスクは、事業所で手作りしたり、入手した不繊布のもので今はなんとかなっている。
今一番困るのは、利用者の排泄時のケアに必要なゴム手袋が手に入らないことだ。スーパーや薬局を何軒も回り、ポリエチレンの100枚入りの手袋をやっと1セット購入できた。だが、その日以来売っておらず、本当に困っているという。
経費補償 報酬改善を
市民、利用者は高い介護保険料をとられているが、介護報酬は改定のたびに減額されている。介護労働者の賃金は低く、小規模事業所はぎりぎりの赤字経営を余儀なくされ、はては倒産続出というのが現状だ。
政府や行政に要求したいことは何か。「アルコール、手袋、マスク、防護服などコロナにかかわる物品供給や経費の補償と、特に介護職員の人手不足の解消です。とにかく介護報酬を上げてほしい」とスタッフのAさんは強調する。市などの事務サイドには、通知文書の改善と速やかな情報提供を求める。
Aさんは「こんな時だからこそ」と毎日の訪問介護を振り返る。「訪問先で何気ない会話から笑顔が生まれたり、感謝の言葉をかけられたりすることもある。不便なことも多いと思うが、少しでも自分の存在が役に立てたら」と、へとへとになりながらも、やりがいに触れる。
介護ヘルパーは「私たちが訪問して会話することで、元気を出してもらえれば」という想いを込め、訪問に出発する。
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