2020年06月12日 1628号

【新型コロナ対策はジェンダーの視点で OPEN〈平和と平等を拓く女たちの絆〉 山本よし子】

負担が増えた女性

 長期にわたる休校が行われ、保育所利用の「自粛」、テレワークなど在宅勤務、「外出自粛」の呼びかけも続く。

 子どもの世話や家庭学習の手助け、食事の用意など家事の負担は主に女性が負わされている。休校中の子どもの宿題を見ているのは、約半数が母親、父親はわずか4%という報告(5/27朝日)もある。高齢者の介護サービスも受けにくくなり、家族とりわけ女性の介護負担が増えた。在宅勤務の女性は「子どもの世話をしながらでは仕事ができない」「睡眠時間を削って夜に仕事をしている」と嘆く。

 「夫が在宅ワークになり、妻に家事一切をおしつけ、何かと文句を言うようになった」などDV(家庭内暴力)も増えているが、外出自粛や加害者が近くにいることで相談機関に電話もできない状況にあり、表に出ない被害増加も指摘される。

仕事を奪われる女性たち

 保育所利用制限や休校で真っ先に追い込まれたのは、非正規の女性労働者たちだ。休業中労働者への補償では、対象から「風俗業で働く女性」を外すあからさまな差別さえ見られた。

 解雇も増えている。総務省「労働力調査」では、4月の完全失業者が178万人。非正規労働者の就業は前月より97万人減り、うち女性が71万人を占める。

 職種で見ると、女性の割合が大きい「医療・福祉」では4割、「宿泊・飲食サービス」の7割が非正規だ。失業や収入減はますます深刻となるのは必至だ。また「多様な働き方」とすすめられてきた「フリーランス」「テレワーク」がどれほど問題の多い働き方かが改めて明らかになった。

 一方、ウイルス感染のリスクにさらされているのは、圧倒的に女性が多い。女性労働者の割合は保健師、看護師で9割以上、介護職は7割以上だ。感染防止用品が不足し、極度の緊張の中で勤務せざるを得ない。働く女性の雇用といのちを守ることは急務である。

支給は個人単位で

 一律10万円給付金の申請者は世帯主になっている。しかし、国内で2人以上でくらす世帯のうち87%は男性が世帯主だ。DVで世帯主と違う場所にいる人は特別な申請が必要だし、被害者が同居の場合、受け取れない可能性もある。「夫や父親が勝手に使っている」「夫に渡してというのは苦痛」という女性の声もある。

 家計は世帯主が握る家制度≠ヘ女性の権利を侵害する。支給は本来の個人単位にすべきであり、税制や社会保障での世帯単位の制度も改めなければならない。コロナ禍の中で男女の格差が広がり女性への差別や暴力が増えている現実に目を向け、コロナ対策もジェンダーの視点で行うよう、声を上げていこう。

 
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