2020年06月12日 1628号

【学びと生活を保障する抜本的な「学生支援」を 奨学金問題対策全国会議が緊急提言】

 「補償なき自粛要請」によって、経済的な危機が深刻化している。5月失業者が急増し、有効求人倍率の減少が明らかになり、「6月大量の派遣切りも」の報道も増えている。雇用環境悪化は学生層を直撃している。政府は「学生支援」を口にはするが、2回の補正予算でも根本的な対策はとろうとしていない。

限定された学生給付

 5月19日閣議決定された「学生支援緊急給付金」は、学生370万人のうち対象となるのが43万人程度に留まる。海外からの外国人留学生だけに「成績上位者」という枠が作られている。「最大20万円の給付」とされる給付額も、住民税非課税世帯の学生が20万円でその他の学生は10万円。1次補正予算予備費からの総額約530億円でしかない。

 また、給付金の対象は学校教育法上のいわゆる「一条校」で、専修学校で専門課程をおく「専門学校」となるため、朝鮮大学校などの「各種学校」は今回の給付金の対象外になる。差別を温存し、国際公約でもある高等教育無償化の理念とは無縁のものとなっている。

 第2次補正予算案の「困窮学生支援」は153億円。各大学等が行う授業料等軽減措置支援などで、当事者の多くの切実な要求に応えるものとなっていない。

深刻な収入減少

 学生団体FREEのアンケート調査では、「5割は家計収入が減少した。8割近くの学生がアルバイトをしている中、7割の学生が アルバイト収入が減少した」と回答している。

 勤労所得が年々減少し経済格差が広がる一方で、学費は値上げされ続けてきた。家計収入から出される「仕送り」も減少し、親元を離れて学生生活を送る「住居費」の負担も都市部であればあるほど高額になる。また、国公立大学も「独立行政法人」として「稼ぐ」ことを求められ、国からの大学運営交付金は減額されてきた。私立大学への補助金も同様に減らされてきた。

 経済的な負担が重くのしかかる学生は日本学生支援機構からの「貸与奨学金」に依存するか、「アルバイト収入」で自らの学生生活を支えるかしかない社会であることが、このアンケート調査からも見えてくる。

待ったなしの対策

 奨学金問題対策全国会議は「奨学金ホットライン」などで明らかになった課題をもとに、5月18日に緊急提言を発表した。その骨格は、(1)日本学生支援機構の「貸与奨学金」の通年実施(2)「住居確保給付金」の利用条件緩和(3)アルバイト収入減の大学生等に生活保護の適用という3項目である。

 入学後の「奨学金」申請手続きは6月までとなっている。大学キャンパスへの出入りが禁止され、「リモート授業」によって「学びの場の保障」が始まったばかりの大学で、申請の手続きは遅れている。「緊急事態宣言」はこのようなところにも影響を及ぼしていることが、ホットラインの相談でも出された。

 3項目は、現行の制度を活用すればすぐに取り組めるものだ。しかし、この対策は「将来の返済負担」に対する手当も必要になってくる。



公費投入で学費半減へ

 「高等教育の漸進的無償化」を長年にわたって放棄してきた政府は、高学費で生計費も高い日本社会で「私費負担」による高等教育の維持を進めてきた。日本学生支援機構の「奨学金」も貸与型で、その原資を「日本学生支援債券発行と民間(金融資本)資金」調達に依存してきた。

 高学費を支払うために、「奨学金」という借金やアルバイト収入で学生生活を維持する学生を多数生み出す社会にしてきたことで、学生層は「社会で脆弱(ぜいじゃく)な階層」になっている。

 全国会議の「緊急提言」に合わせて、公費投入による学費半減、納付期限延長が今こそ必要な政策だ。政府の「学生支援」を実効性あるものにし、さらに抜本的対策を求めていく闘いが必要になっている。

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