2020年06月19日 1629号

【新型コロナ対策/ドイツ左翼党 幹部会決議(要旨)/利潤よりも人間を優先せよ】

 コロナ危機の克服へ、グローバル資本主義と闘う世界の勢力は何を訴えているか。ドイツで社会主義を展望する変革を掲げるドイツ左翼党の幹部会決議「連帯して危機から抜け出す―利潤よりも人間を優先せよ!」(2020年3〜4月)の要旨を紹介する。

 コロナ危機のせいで、多くの人びとが自宅や自宅のオフィスにとどまっている。多くの人びとが自分の仕事の行方、自分の健康、自分の親族について憂慮している。しかし、コロナウイルスの大流行は万人に等しく襲いかかっているわけではない。保育所や学校に行くことができなくなった子どもたち、狭い住居に住まざるをえない貧しい人びと、地域の宿泊施設で暮らすホームレス生活者、難民、高齢者、障がい者、人種差別被害者、積立金をもたない小企業が、不均等に大きな被害をうけている。

 いまや明らかになったのは、誰が社会を結び合わせ、どのような労働が社会の維持に重要かという点だ。たとえば、医療と介護、教育、農業、小売業、輸送業など、基本的な市民生活に必要不可欠なすべての分野だ。

 これらの労働の多くは女性が担っているが、社会的重要性に比して報酬はわずかだ。この分野で仕事に従事している人びとこそ、感謝と承認を受けるにふさわしい。健康の保障とより高い賃金とより良い労働条件を享受すべきだ。

人びとの救済策

◆外出して人と接する仕事に就くすべての労働者は、保護用マスク・手袋を支給されなければならない。使用者は、十分な感染防止措置を取らなければならない。

◆すべての労働者の操業短縮手当を、従前の賃金総額の90%にまで引き上げる。

◆労働者の健康が優先される。社会の維持に必要不可欠ではない業種では、労働者は出勤して感染のリスクにさらされることを強いられてはならない。

◆自営業者と小規模経営、文化創造の仕事をしている人への支援は拡大されなければならず、営業再開後も維持されなければならない。

◆自宅で子どもを世話する必要がある両親への補償金は、操業短縮手当と同様に従前の賃金額の90%でなければならない。補償金は保育所と学校が閉鎖されている間は支給すべきだ。

◆最低賃金減額と労働時間上限引き上げを許さない。最低賃金は13ユーロ(約1560円)に引き上げられなければならない。

◆住居を保障する。家賃の値上げ、住宅賃貸の解約と立ち退きの強制、電気と水道の供給停止を許してはならない。拘束力を有する家賃の上限額を定めよ。(難民や感染者が収容されている過密な)集団宿舎は無くし、代わりに個別の住宅を提供するか、ホテルに宿泊できるよう要求する。これは、野宿者にも利用可能でなければならない。賃金がないのなら、家賃は無償だ。

危機に耐えうる医療

◆病院と高齢者介護施設はそれぞれ少なくとも10万人の人員不足がある。医療・介護現場のすべてのスタッフに月500ユーロ(約6万円)の手当を支給する緊急プログラムが必要だ。そうすれば、追加的なスタッフも確保され、労働条件も改善する。スタッフと患者の健康も保障されるだろう。

◆利潤よりも人間を優先すべきだ。医療と介護は、公的機関が引き受け、公的に組織されなければならない。医療と介護で利潤を追求することは禁止すべきだ。公的な医療サービスと保健官庁を強化、再建し、病院への投資の停滞は解消しなければならない。

◆各病院には実際に費やした医療費をすべて補填しなければならない。

◆医療技術と医薬品の開発・研究は、公的に管理されなければならない。

未来への投資

 危機に強く社会的・生態学的に持続可能である経済制度へと向かう出発点として、現時点を位置づける。そうしたインフラ投資が優先される国家の財政支援策を形成しなければならない。

◆公的な交通網の輸送能力と人員を拡充する。

◆公的な生存保障、とくに医療、介護、教育の分野での受け入れ能力と人員を拡充する。計画化と研究と科学を強化する。

◆ブロードバンドのインターネットと信頼できる通信網を、農村地帯をふくむドイツ全土に張りめぐらす。

◆エネルギー効率と市民管理の再生可能エネルギー供給とを強化する。

◆インフラ(たとえば保育所や学校)への投資は、危機による税収不足を理由にして放棄されてはならない。

危機の時こそ民主主義

 現状、人との接触を減らすことは感染回避にとって意味がある。そのことはまた、基本的諸権利を制約することにもなる。コロナウイルス検査を住民の大部分に拡大するよう要求する。検査拡大で感染者を隔離し、非感染者の移動の自由の制限を軽減できる。しかし、以下の点を曖昧にはできない。

◆移動の自由に対するすべての制約は、必要に見合い、検証可能で、健康維持という目標に関連するものでなければならない。

◆連邦、州、市町村議会の弱体化、執行権力への授権があってはならない。政治的活動は可能であり続けなければならない。

◆「(感染)リスク集団」(高齢者、持病を持つ人、喫煙者など)の隔離、分離の計画と実行に反対する。

危機コストの公平負担

 ドイツには、130万人の百万長者と126人の億万長者がいる。その数は過去数年間に増えた。これらの人びとは、最低賃金の60%しかない失業手当や操業短縮手当での生活を強いられている労働者と違い、税を納めることができるし、公正な貢献ができる。

◆危機の財源のために、100万ユーロを上回る資産に5%の税を課す資産税を復活する必要がある。200万ユーロ以上の資産にさらに5%の公課を課す。

◆国家債務の上限、均衡財政または財政黒字という制約は撤廃する。

◆最も公正な税である「連帯加算金(高額の所得に重い負担を課し低額の所得には課さない)」はコロナ危機でこそ維持されるべきだ。

◆所得税の非課税限度額は引き上げなければならない。高額の所得と最高額の所得への税率を高めるべきだ。

 
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