2020年06月19日 1629号

【またも隠蔽、安倍政権/コロナ会議の議事録作らず/民主的検証を拒む密室政治】

 情報隠蔽(いんぺい)の常習犯=安倍政権がまたやった。新型コロナウイルス対策を検討する専門家会議の議事録を作っていなかったのだ。政府のコロナ対策を実質的に決める場になっている「連絡会議」の議事録もない。政策決定の過程を隠し、検証できないようにしているのである。

何を隠しているのか

 3月10日、政府は新型コロナウイルス感染症への対応を「歴史的緊急事態」に指定した。「歴史的緊急事態」は、東日本大震災に関する政府会議の議事録が未整備だった反省を踏まえ、行政文書の管理に関するガイドラインに盛り込まれた規定。指定されると、政策の決定や了解を行う会議については、開催日時や場所、議題、出席者、発言内容を記載した議事録の作成が義務づけられる。

 西村康稔(やすとし)経済再生担当相は3月17日の参院予算員会で「内閣官房が担当する連絡会議、課長級会議、関係閣僚会議、対策本部、幹事会、専門家会議はしっかりと記録を残したい」と明言した。だが、その約束はあっさり破られた。専門家会議の議事録が作られていないことが共同通信の報道で発覚したのである。

 西村は「記録すると言ったが、議事録を作るとは言っていない」とでも釈明するのだろうか。それこそ安倍一派が得意とする「ご飯論法」である。

 菅義偉(すがよしひで)官房長官は、専門家会議はガイドラインが定める「政策の決定または了解を行わない会議等」に該当し、議事録を作成しなくても問題ないとの認識を示した(5/29)。とんでもない詭弁である。安倍晋三首相は様々な局面で「専門家の意見を踏まえて」判断したと述べてきた。その判断のもとになった専門家会議の議論は、すべて公開されなければならないものだ。

 発言者が特定されない議事概要なら首相官邸のウェブサイトで公開されている。しかし、その内容には隠蔽の疑いがある。たとえば、PCR検査に関する記述が不自然に少ない。どう検査体制の拡充するかを議論したと尾身茂副座長が証言している2月24日の議事概要を見ても、議論があったとは書かれていない。

 なぜか。政府のPCR検査抑制方針に疑義を呈する意見が出ていたからではないか。あるいは、専門家が提言していない政策を押しつけていたことを知られたくないからか。厚生労働省が示した「相談・受診の目安」(37・5度以上の発熱が4日以上続いた場合)あたりが疑わしい。

「作戦会議」は闇の中

 世論の批判を受け、政府は次回の専門家会議から議事概要に発言者名を明記する方針を示した。ただし、やりとりをそのまま記録した議事録の作成は今後もしないという。首相と関係閣僚らがコロナ対策を協議する連絡会議の記録については、一般公開はしないと言明するありさまだ。

 連絡会議は感染の拡大後ほぼ毎日、首相や関係閣僚、省庁幹部らが集まって開催されてきた。非公式の会合だが、コロナ対策に関する「作戦会議」だと政府高官も認めており(6/3東京新聞)、2月末の「全国一斉休校要請」もここで決まったとされる。

 一方、議事録の作成が義務づけられている対策本部の会合は、官僚が用意したペーパーを読み上げ、決定事項を発表するだけの場になっている。本当の意思決定の場は連絡会議だが、その内容は明かさない。理由は容易に想像がつく。デタラメ、思いつき、党利党略などのオンパレードだからであろう。

 自衛隊PKO部隊の日報隠蔽や森友学園事件をめぐる財務省の決裁文書改ざん、桜の見る会の招待者名簿破棄など、公文書にまつわる不祥事が安倍政権の下で相次いできた。そうした政権の隠蔽体質がコロナ対策会議の記録隠しにもつながっているのである。

記録を残さぬ手口

 ギゾウ、ネツゾウ、アベシンゾウと揶揄(やゆ)されるが、情報隠しの究極の手口は記録を残さないことである。実際、首相官邸は安倍首相と省庁幹部らの面談記録を一切残していない。やりとりを省庁側がメモすることも許さないという。首相がどんな判断を下したか、一切分からないようにしているというわけだ。

  *  *  *

 公文書管理法は第1条で公文書を「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」として「主権者である国民が主体的に利用し得るもの」と規定している。安倍政権は法の精神を踏みにじり、「現在及び将来の国民に説明する責務」(同)を放棄している。

 一部の権力者が外部から検証できない密室のなかで、人びとの運命を左右する政策を決めてしまう――そんな国は民主主義の国ではない。情報の独占は独裁国家の始まりなのだ。 (M)

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