2020年06月26日 1630号

【ミリタリーウォッチング イージス・アショア配備計画停止 民意は白紙撤回だ】

 5月7日、防衛省は陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の「秋田新屋(あらや)配備」を「断念」すると発表した。昨年明らかとなった防衛省のずさん極まりない「適地調査」などへの住民の不安と怒りの前に「断念」は当然だ。だが、防衛省はなお「再調査」を実施していた。

 イージス・アショアの配備は、防衛省内部から出された要求ではなかった。2017年3月、自民党政務調査会が「弾道ミサイル防衛の迅速かつ抜本的な強化に関する提言」を出した。座長は小野寺五典。小野寺は8月に安倍内閣の防衛大臣となり、日米安保協議会(2+2)で日本はイージス・アショア導入を要請。18年度「防衛予算概算要求」に盛り込んだ。11月トランプ米大統領が来日し、「導入を歓迎」。配備先に秋田市と萩市・阿武(あぶ)町が浮上し、12月に閣議決定し予算案に計上と例のない超短期間での動きだった。

 通常、防衛省がイージスのような巨額の装備を導入する際には向こう10年の期間で策定する「防衛計画の大綱」と5年単位の「中期防衛力整備計画」で明らかにし、国会での論議を経て決まる。今回のイージス・アショア導入は防衛大綱にも中期防にも書かれていない。最初から国民の目が届かない所で、官邸主導でことが運ばれているのだ。安倍はトランプの「バイ・アメリカン(米国製品を買おう)」政策にどっぷりつかり、米国のステルス戦闘機F35もイージス・アショアも爆買いを続けている。

 しかし、そんな経過の中、昨年の参院選秋田選挙区では、イージス・アショア導入反対を唱えた候補が自民・公明の候補者に勝った。

 また、山口県では萩市と阿武町にまたがる「むつみ演習場」が候補地だが、阿武町の花田憲彦町長は明確に反対を表明している。「町民の信託を受けて町長に就任している私の大義は、町民の安全・安心の確保であり、これを脅かすものを排除するのは、町長である私の当然の責務。阿武町として配備反対を明確に表明させていただきます」。18年9月の町議会本会議で町長が発した言葉である。

秋田も山口もノー

 阿武町は日本海に面した人口3300人の小さな町。平成の大合併≠ヘせずに、町外からの移住促進に力を入れ、転入者への奨励金制度や空き家バンク施策を打ち出してきた。今では町内の小中学校3校は、4分の1が移住者の子どもたちとのこと。「イージスが配備されたら、移住してまで住みたいと思った町ではなくなってしまう」。移住者である住民の声だ。

(追記)6月15日、河野太郎防衛相は「イージス配備計画のプロセス停止」と表明した。政府は停止ではなく、イージス・アショアそのものを白紙撤回すべきだ。

藤田なぎ
平和と生活をむすぶ会

MDSホームページに戻る   週刊MDSトップに戻る
Copyright Weekly MDS