2020年06月26日 1630号

【ストライキ2.0/ブラック企業と闘う武器/今野晴貴著 集英社新書 本体860円+税/社会を変える道筋を示す】

 現在の日本は、諸外国との比較でも労働者のストライキの件数があまりにも少ない。企業別労働組合が主流の日本では、ストライキは企業個別の問題として社会的に孤立してしまう傾向が強かった。ところが近年、ストライキの新たな展開が見られると著者は言う。

 自販機大手ジャパンビバレッジで働く労働者の「ブラック企業ユニオン」が、長時間労働是正や「みなし労働」による未払い残業代支払いを要求してストに突入。東京駅構内の自販機が在庫切れ続出となり、SNSで労働実態が拡散され、支持が拡大した。結果、ストは成功し、同業他社の労働者にも波及した。

 著者は、新しいストライキの3つの特徴をあげる。第一は、「自販機業」「宅配業」など職種に共通した課題で闘い同業他社の労働者と連帯する。第二は、「保育」「介護」「教育」など社会的労働の質の向上を課題とし利用者と連帯する。第三は「非正規」「正社員」「偽装自営」など分断されてきた労働者が階層的に連帯することだ。

 こうしたストはSNSなどで拡散され、社会的支持と連帯を作り出している。本書は、その実例を多く紹介する。「お客様のため」と長時間労働を強いる「やりがい搾取」を克服し、労働者と利用者が連帯し、資本に対峙していく最大の武器がストライキだ。

 アメリカでは2018年が「ストライキの年」と呼ばれ、公教育破壊と闘う教員ストや最低賃金15ドルを実現した移民・黒人労働者のストが広がった。そして今、コロナ禍で収入が途絶えた人の「住宅スト」。ストライキは社会を守り、新しい社会を創造する手段なのだ。(N)
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