2020年07月03日 1631号

【沖縄 新基地工事の再開を強行 イージス停止で辺野古は止めないのか 二重基準は許せない】

県議選民意 またも否定

 沖縄防衛局は6月12日、辺野古新基地建設のための工事を再開した。工事作業員の新型コロナウイルス感染を受け、4月17日から約2か月間工事を止めていた。5月15日、沖縄県独自の緊急事態宣言が解除され、続く25日に政府の緊急事態宣言が解除されても工事は再開していなかった。

 再開したのは6月7日に沖縄県議会議員選挙が終わったからだ。選挙期間中の工事再開は県民の批判を招き、自民党候補に悪影響を及ぼす。政権の思惑で止めたり再開したりできるのがこの工事なのだ。

 選挙結果は、辺野古反対の議員が県議会の過半数を維持した。許せないのは、日頃「選挙は結果がすべて」と口にする菅義偉官房長官が、自民党が議席を伸ばした点だけを切り取って新基地建設への「地元の理解が進んだ」などと語ったことだ。県議選結果が示した民意は辺野古新基地建設反対≠セ。

違法工事に座り込む

 12日午前9時前、名護市辺野古のキャンプ・シュワブゲート前では、駆けつけた市民50人が座り込みを開始。梅雨が明けたこの日は朝から強い日差しがゲート前の国道329号線に照りつけ、汗が噴き出す。9時30分、ダンプなど工事車両111台がゲート前に到着すると、県警機動隊が市民の排除に入った。約2か月ぶりのごぼう抜きだ。

 オール沖縄会議のコロナ感染対策のガイドラインで「ごぼう抜き」の前に自主的に移動することが決められているが、ぎりぎりまで座り込みを続ける市民が多い。無法な工事を強引に進める政府への怒りで、椅子から離れまいと必死で食らいつく。「工事の予算をコロナに回せ」「民意にそぐわない工事はやめろ」と声を上げる。ガイドラインでは抗議のコールをすることも禁じられている。だが、違法な工事に対し、正義はこちら側にある。つい声が出てしまう。

 沖縄平和市民連絡会の上間芳子さんは「私が最後まで座り込むのを知っているから、機動隊も私を排除の最後にしている。来たらどくよ」と話した。

 12日の定例記者会見で玉城デニー知事は「工事再開は大変遺憾だ。反対の民意は繰り返し示され、県議選でも反対が過半数の議席を占めたことから、民意は揺るぎないと受け止めている」と語った。同日、安倍晋三首相は記者団に「移設を1日でも早く達成したい」と言い放ち、工事強行を当然とした。 

 防衛省が秋田、山口両県への地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の配備計画を停止するとの情報が入った6月16日、辺野古ゲート前や前日から土砂搬出が始まった名護市安和(あわ)桟橋、本部町塩川港でも市民は新聞を食い入るように見る。政府の「ミサイル防衛」システムの根幹に関わる部分を自ら手放すことがあるのか。

沖縄の声は無視か

 防衛省は、システム改修にコストと期間がかかると配備計画を停止した理由を示した。16日の衆院安全保障委員会で赤嶺政賢議員は、イージス導入経費が6000億円超に対し辺野古は総額2兆5500億円(沖縄県試算)を上回るコストがかかるとし、「いったん工事を止めて、事業そのものを再検討すべきだ」と指摘した。しかし、河野太郎防衛相は「(辺野古が)現時点では唯一の選択肢」と、なお開き直っている。

 「これだけ反対を訴えている沖縄の扱いとは雲泥の差がある」と山城博治沖縄平和運動センター議長は憤る。玉城デニー知事も「コストと期間を考えたら辺野古の方がより無駄ではないか」と政府を強く批判した。秋田、山口では市民の声を聞いても、沖縄の声は無視するのか。「二重基準許せない」と市民の怒りは収まらない。

 (N)

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