2020年07月03日 1631号

【新型コロナ 生活苦に追い込まれる貧困層 今すぐ生存権確保を 災害緊急アクション】

 新型コロナウイルス災害によってとりわけ貧困層が生活苦に追い込まれている。3月24日に発足した「新型コロナ災害緊急アクション」は6月12日、参院議員会館講堂で活動報告会を開催した。約200人が集まり、立憲民主党・共産党・社民党など十数人の国会議員も要求を政策決定につなげる決意を述べた。

 同アクション事務局長の瀬戸大作さんは、生存権が奪われている実態を紹介。「所持金が千円を切った20〜40歳代からのSOSが多い。ネットカフェ休業で路上で生きるしかない。雇用を打ち切られて社員寮を追い出された。親族の虐待から逃げたが行き場がない」

誰も路頭に迷わせない

 年越し派遣村の経験から「今こそハウジングファースト(住まいから始まる支援)を」と訴えるのは稲葉剛(つくろい東京ファンド)さん。「離職後2年以内の人という『住居確保給付金』対象に『休業等で収入が減少』を加えさせ、『ハローワークへの求職申込み』の要件は、自営業者・フリーランスも使えるように『登録不要』に変えさせた」と報告。4月7日緊急事態宣言発出に伴うネットカフェ休業要請で、約170件のSOSが届いた。「仕事は退職扱い、寝泊まりする場もなくなった」「もう死んだ方が楽」。

 「最寄りの駅でヒヤリング後に緊急宿泊費を手渡し、公的支援窓口への同行などアウトリーチ型の支援」で対応。「東京都に対しては、緊急宿泊支援の条件となる都内6か月以上のルールを撤廃させた。住まいは人権、家は無条件で提供すべきだ。コロナ災害で、誰も路頭に迷わせない」と述べた。

退学する学生を出さない

 生活保護問題対策全国会議の田川英信さんが指摘したのは、生活保護が急増する中での「水際」対応だ。「『ホームレスは居住場所が定まらないと申請できない』と追い返す。『女性は婦人保護施設で保護となっている』『ホームレスは無料低額宿泊所へ』との誤まった指導。『ビジネスホテルに泊まりながら生保は利用できない』『居住不動産や事業用の資産があるから保護はできない』と拒否するなど、違法な対応が目立つ」と危惧する。

 奨学金問題対策全国会議の大内裕和中京大教授は「貸与奨学金を締め切らず通年で実施、貸与月額の上限6万円引き上げなど要請してきた。住居確保給付金、学生の生活保護利用も求めてきた。野党4党が『コロナ困窮学生支援法案』を提出したが、授業料の半額免除、アルバイト減収分の支援、貸与型奨学金の返還免除と、普遍主義に沿ったもので評価できる。コロナ災害で学校をやめる学生を一人も出さないを原則に闘う」と力強く述べた。

公的支援のない外国人

 移住者と連帯する全国ネットワークの稲葉奈々子さんは、緊急ささえあい基金の取り組みから、日本で住みづらい外国人の実態を明らかにした。「6人が技能実習生として縫製会社の寮に住んでいるが4月末から仕事がなく無給状態(ベトナム人)、失業保険が終了しアルバイトもなくなり今は家財を売る以外にない(ブラジル人)方たち」

 基金申請のあった280件(456人)の5割以上が10万円給付金など公的支援も受けられない状況だ。「新型コロナによる困窮は国籍や在留資格と関係ない。仮放免者や短期滞在者も住民基本台帳に記載してほしい。公的保険に加入できず、治療費は高額で、受診を控えている。家賃が払えない状態なので、公営住宅入居の道を」と訴えた。

 瀬戸事務局長は「生活困窮者支援の現場は野戦病院のような状態で、民間がボランティアでできる範囲をとっくに超えている。いますぐ生存権を守る公的責任、企業の雇用責任を求めたい」と訴えた。



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