2020年07月17日 1633号

【時代が求める労働組合運動を/権力の攻撃に情報発信で対抗/関生弾圧を許すなシンポジウム開催】

 正当な労働組合運動を刑事事件にでっちあげる―全日本建設運輸連帯労働組合関西生コン支部(関生支部)への前代未聞の大弾圧を許さないと6月21日、大阪でシンポジウムが開催された。4人のシンポジストの問題提起は、弾圧の意味や反撃の手がかりなどを明らかにし、労働組合運動に重要な視点を与えた。

 弁護団の一人永嶋靖久弁護士は、警察権力が2014年の倒産争議解決金合意にまで5年さかのぼり「恐喝」罪を適用していることを示し、関生支部の運動路線それ自体を罪に問う意図があると指摘した。権力の労働組合像は、企業内正社員だけの御用組合。憲法や労働法を盾に要求を通す関生支部は「やくざよりたちが悪い」ととらえている。

 逆に言えば、関生のような労働組合運動が今求められている証しだ。労働法学者の立場から、吉田美喜夫立命館大学名誉教授が関生支部をターゲットにした国家権力による組織的弾圧の背景を明らかにした。

 関生支部の闘い方をコンビニ業界に置き換えてみれば、バイトのストライキに店舗オーナーが協力し、フランチャイズ本店と闘う構図となる。非正規・請負という労働形態を押し付ける新自由主義政策があらゆる場面で問われてくる。関生のような労働運動が平和や環境など社会運動や市民運動を活性化することを国家権力は恐れているのだ。

 だが、ネット社会では関生支部は「悪者」扱いされている。闘いの意義は広がっていない。どう闘うか。GPS違法捜査事件などに取り組んだ亀石倫子(みちこ)弁護士が劣勢を跳ね返した自らの経験を語った。

 大阪のクラブが風営法違反で摘発された。タトゥー彫師が医師法違反に問われた。GPS捜査を受けたのは窃盗グループだった。いずれも社会の「嫌悪」を権力が利用した事件だった。亀石さんは裁判費用を捻出しようと、クラウドファンディングに取り組み、違法性を訴え想定以上の基金を集めた。「世間に知られていない事件ほど弾圧はしやすい」。いかに事実を広げていくかにかかっている。

 警察は自らの描いたストーリーに合わせ事件をでっち上げていく。警察情報を垂れ流すマスコミも加担する。ジャーナリストの竹信三恵子さんはネットにあふれる「関生ヘイト」に焦点を当てた。権力のストーリーを打ち消す労働者側の正しいストーリーを拡散する重要性を強調。今回のシンポジスト吉田さんをはじめ労働法学者の有志が記者会見を開き関生弾圧を非難した意義は大きいと言う。竹信さんは月刊誌『世界』に関生弾圧を連載した。

 100人限定のシンポジウムだったが、ネットにライブ配信がされた。640日を超える勾留後、保釈された武健一委員長、湯川裕司副委員長のビデオメッセージも流れた。反撃はここからだ。

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