2020年07月17日 1633号

【税金使ってマイナポイント?/コロナ危機を悪用するマイナンバーカード普及策/国民監視体制の強化狙う】

 安倍政権はコロナ危機に乗じて、これまで全く進まなかったマイナンバーの普及を一挙に進めようと狙っている。

 6月22日の経済財政諮問会議の場で安倍晋三首相は「コロナウイルス感染症の拡大の経験を通じて、デジタル化を強力に推進していくことの意義、重要性について、行政に携わる者はもちろん、国民の皆さん誰もが痛感した」と述べ、「デジタル・ガバメント(電子政府)」構築に「一刻の猶予もない」と檄を飛ばした。医療・介護をはじめ、政府・自治体の行政サービスをデジタル化するその柱のひとつが「マイナンバーの普及活用」というわけだ。

「迅速給付」と無関係

 マイナンバーカードは、21年3月末までに7千万枚交付が政府目標だが、現在(6/21)までの保有者は、2187万人、普及率は17・2%にとどまる。16年1月運用開始から4年半経ってもこの程度だった。

 コロナ危機をテコにした普及策、手はじめは給付金「10万円」の交付事務だった。「マイナンバー利用なら早い」とあおった。だがオンライン申請といっても、紙の代わりに申請書を出せるだけ。担当者は誤記載対応のため紙ベースでの照合が必要で事務が膨大になり、100以上の自治体が早々と中止した。

 安倍は緊急事態宣言解除の記者会見で給付事務の失態を「マイナンバーカードと銀行口座が既に結び付いていれば、これはかなりスピード感を持って対応することができた」(5/25)とすり替え、口座ひも付けの必要性を強調した。

口座ひも付けの危険性

 すぐさま議員立法で「マイナンバー口座ひも付け法案」が提出された(6/8)。この法案は継続審議となったが「口座登録は任意」だった。だが政府は「1人1口座を義務化」(6/9 高市早苗総務相)する法案を来年の国会に提出すると表明している。利便ばかりが強調される「口座紐づけ」。その危険性は次の通りだ。

 第1に、政府による個人情報の一元管理に道を開くことだ。議員提出法案では、口座名簿(マイナンバーや口座番号、氏名、生年月日、住所など)を作成し、マイナポータル(政府が管理するマイナンバーオンラインサービス)に1人1つの振込口座を登録する。この仕組みは、マイナンバー制度導入の際の取り決め「個人情報保護の観点や情報の一元管理を回避する観点から、利用者の個人情報が利用者フォルダに極力蓄積しないような仕組みとすべき」に違反する。

 また、住基ネット最高裁判決をふまえ、個人情報の一元的管理にならないよう情報連携は「符号」で行い、符号とマイナンバーがひも付かない措置を講じるとされていることにも違反する。「銀行口座とひも付けはいかがなものか」(6/2仙台市長)という異論がでるのは当然である。

 第2に、マイナンバー制度が捜査・治安目的に利用されることだ。自民党プロジェクトチーム提言は、新型コロナ対策に便乗してマネーロンダリング対策やテロ対策を利用目的に加えることを提言している。マイナンバー法第19条は個人情報提供を原則禁止としながら例外を認めている。「刑事事件捜査や治安機関へのマイナンバーの付いた個人情報の提供と保有・利用」を可能にしているのだ。

 これらは、「迅速な給付」とはまったく関係無い。コロナ危機に乗じた火事場泥棒的やり口だ。個人情報の国家管理を進める「口座ひも付け」法案は必ず廃案にしなければならない。

決済情報を収集

 安倍は、7月中に決定する「骨太方針(経済財政運営と改革の基本方針)2020」で、「マイナンバーの公共機関と民間企業の活用の加速、銀行口座とマイナンバーシステムとの連携の法制化」を打ち出す。

 さらに、消費税対策と称して、マイナンバーカードを持つ者だけに2万円の利用を上限に25%(上限5000円分)のポイントを付与する「マイナポイント」を9月から来年3月末まで実施、税金2478億円を投じる。マイナンバーカード取得促進とあわせ、キャッシュレス決済の利用情報を政府が取得できる仕組みを整備しようというのだ。

 継続審議となったマイナンバー口座ひも付け法案をはじめ政府の仕掛けは、個人情報の一元管理と監視社会に誘導するものだ。対抗策は、カードを持たず利用せず。マイナンバー制度を廃止に追い込もう。

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