2020年07月17日 1633号

【コロナ禍で貧富の差が歴然となるフィリピン/子どもたちに教育と栄養を/アバカダの存続をかけ支援強化】

 フィリピンの子どもたちの学習、青年・母親たちの生計自立支援を続ける「AKAY(アカイ)プロジェクトをともに創る会」は6月20日大阪市内で、総会を開いた。フィリピン現地とネットでつなぎ、現地の厳しい状況を聞いた。

 支援連帯関係にあるアバカダ(ABAKADA、マニラ首都圏の貧困地域の就学前教育施設。アバカダはフィリピン語のアルファベット〈ABC〉を指す)の運営者で音楽家のポール・ガランさんがコロナ禍の状況を次のように報告した。

失業と弾圧

 フィリピンでは、ドゥテルテ政権が3月16日からマニラを都市封鎖。25日には非常事態宣言を出した。都市封鎖は5月31日に解除されたが、60歳以上の高齢者と子どもたちの外出はいまだに禁止されている。感染者総数は、6月15日現在、2万6420人、死者総数は1098人。コロナ禍の中で、貧富の差が一層際立った。医者は3万3千人に1人(日本では400人に1人)。PCR検査は市民には届いていない。

 1千万人が失業し、そこに海外出稼ぎ労働者も30万〜40万人が帰国している。政府は、労働者に月5千〜8千ペソ(1万〜1万6千円)を休業補償として2か月支給すると言うが、受給できている人は少ない。1世帯当たり米5キロ、缶詰5缶、ヌードル5パックが月2回配給されるが、人びとは飢えている。

 ドゥテルテ政権は、コロナ禍を利用して圧力を強めている。ニュースサイト「ラップラー」記者、マリア・レッサさんは6月15日、サイバー名誉棄損罪で有罪判決を受けた。政権に批判的なメディアを狙っている。一方、韓国や米国から武器を280億ペソも購入。さらに反テロ法を作り、活動家弾圧に乗り出している。

 学校・学園は本来、6月から開始なのだが、8月に延期された。教育省、保健省は対面学習を禁止し、遠隔学習とするよう通達した。500校の私立幼稚園のうち400校が閉鎖状態となっている。

苦境にも負けず

 こうした中でアバカダは、失業者支援団体のリーダーから要請を受け、アバカダスタッフが調理をし、支援団体が料理を配布する活動を4月13日から2か月続けた。オンライン授業準備も開始した。幼稚部の開校には100人の子どもの登録が必要。だが、失業している保護者が多いため、現在43人の子どもしか登録できていない。

 この状況では雇用できる先生はエステリータ先生1人、残る3人の若い先生たちの仕事がなくなる。今、ロセッタ先生はアバカダ食堂の総菜をオンラインで販売したり、ジョナルド先生は父親の仕事を手伝ったり、縫製と授業支援を担うレイヤーさんはアルバイトに行くなどの対策を考えている。

  *  *  *

 AKAYは、アバカダを支援しようと5月下旬より「コロナ禍カンパ」に取り組んでいる。子どもたちの未来が平和であることを願って若い先生たちを育ててきたアバカダ。32年間続く灯を消してはならないとの強い思いが込められている。

 7月26日に日本で開催される2020ZENKOin大阪(第50回平和と民主主義をめざす全国交歓会)の分科会で、フィリピンとズームでつなぎ、海を越えてコロナ危機を乗り越える議論をする。当日は、ポール・ガランさんだけでなく先生やスタッフ・保護者も交え、コロナセミナーや行政への要求行動などを話し合おうと計画が進んでいる。

 AKAYではコロナ禍で苦境にあるアバカダを存続させるために、引き続き支援カンパを集めている。

◆カンパ振込先/ゆうちょ0098‐2‐147849 

◆ZENKO分科会にはズーム参加可能。連絡先 kobukefam@jcom.zaq.ne.jp



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