2020年07月17日 1633号

【たんぽぽのように 6月のある日 李真革】

 個人や集団ごとに特別な意味を付ける月日がある。

 韓国で生まれ育った私にとって、「6月」は「護国報勲の月」であり、その「25日」が真っ先に思い浮かぶ月でもある。朝鮮戦争が勃発した6月25日を控え、反共ポスターや作文、スピーチなど、自由大韓民国を侵略した北傀と祖国の仇敵に向けた敵意を表わし、また、それを大事にすることが当たり前の幼年時代を過ごした。

 ところが、2000年6月の「その日」以降、6月は平和と統一を語る月になった。平壌(ピョンヤン)で金大中(キムデジュン)大統領と金正日(キムジョンイル)国防委員長が会った「6月15日」は、韓国社会を50年以上支配した反共主義を少しずつ追い出し始めた。2018年には、文在寅(ムンジェイン)大統領と金正恩(キムジョンウン)委員長が板門店(パンムンジョム)で会い、朝鮮半島の平和と統一は直ちに実現されるかのようだった。

 しかし、「6・15共同宣言」20周年記念日の翌2020年6月16日、朝鮮は南北共同連絡事務所のビルを爆破させた。2018年の板門店会談で南北首脳がお互いに一切の敵対行為をしないことを約束したが、韓国側がそれを履行しなかったと、北側は主張した。

 実際、北側を非難するビラが継続して南から飛んで行き、名前を変えただけの韓米合同軍事訓練が引き続き実施された。その一方、南北鉄道連結、開城(ケソン)工業団地と金剛山(クムガンサン)観光の再開など南北協力事業は、一歩も前進していなかった。米国という存在を口にした瞬間、南側の主体性は消えてしまう。朝鮮半島の時計は、2000年6月15日以前に戻ったように見える。

 2020年の韓国の国防予算は約4兆5千億円である。文在寅政権になってから3年で1兆円ほども増加した。このペースであれば、2026年には日本の防衛費を追い越すという。今年の日本の防衛予算は約5兆3千億円だ。戦車とミサイル、戦闘機と空母は何のためだろうか。

 私がもし日本に住んでいなければその意味を知ることはなかったと思う「6月23日」。安倍首相は、ビデオメッセージを介して「沖縄の基地負担を軽減するために努力する」と述べたが、沖縄県民の大多数が反対する新基地建設に関しては何の言及もしなかった。軍事基地は誰のためだろうか。

 我々は今もなお戦争を記念する日々を生きている。今からはどのような日々を創っていくべきだろうか。

(筆者は市民活動家、京都在住)
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