2020年07月24日 1634号

【ミリタリー・ウォッチング 能勢の教訓¥リ明したイージス断念 ミサイルでなく「基地ごめん」だ】

 6月24日、政府の国家安全保障会議(NSC)は秋田・山口両県への陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」配備計画の断念を決定した。

 奇(く)しくも、今年は「大阪・能勢ナイキ基地建設」計画が打ち出されて50年にあたる。能勢ナイキ基地建設反対闘争は、地元住民を先頭に、周辺自治体や労働組合を巻き込んだ幅広く、粘り強い7年間の闘いの末に建設計画を断念させ、勝利した。1973年には、長沼ナイキ基地訴訟で自衛隊違憲判決も勝ちとられた。今回のイージス・アショア配備撤回は、能勢の教訓≠ナある「基地建設は断念させることができる」を見事に証明したと言える。

 だが、敵もしたたかであることは今も昔も変わらない。「能勢断念」の結果、関西配備第4高射群は各務原(かかみがはら)2個高射隊、白山基地(三重)とあいばの基地(滋賀)となった。今、イージス・アショアに代わるより強力で効率的なミサイル軍備への衝動が政府内で強まっている。中国を主要なターゲットにした「ミサイル防衛」体制構築・強化が政府の戦略であり、すでに進行中である。

 新たに設置・建設された京丹後Xバンドレーダー基地や「南西諸島防衛線」―奄美〜宮古〜石垣へとつらなるミサイル基地群はこの戦略に位置づいている。もともとイージス・アショア基地は、いつでも「先制攻撃用中距離ミサイル(または巡航ミサイル)基地」への転換が可能で、「用途変更」が危惧されていた。

 米軍は、米ロINF(中距離核戦力)条約失効(19年8月)に乗じて、日常化した横須賀、佐世保、ホワイトビーチ(沖縄)寄港の原子力潜水艦に新型ミサイルを搭載することを狙う。

 日本政府も「敵基地攻撃能力」の保有に乗り出した。敵の射程圏外から発射できる「スタンド・オフ・ミサイル」や地対地「高速滑空弾」などの射程が長いミサイルが候補にあがっている。

 さらに、今後始まるのが沖縄島への地対艦ミサイルの配備だ。米海兵隊、米陸軍ともに、南西諸島への対艦ミサイル配備策動が予想される。これらを想定した自衛隊の地対艦ミサイル部隊と米陸軍の部隊が共同訓練を行っている。

 INF無条約の今、必要なことは「安保の空白を埋める」などとするミサイル開発ではなく、INF全廃条約を再現すること、その「東アジア版」を創出する努力である。そして、その基盤となるのは辺野古新基地建設阻止をはじめとした全国の「基地ごめん」の闘いである。

豆多 敏紀
平和と生活をむすぶ会

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