2020年07月24日 1634号

【イラクと日本 コロナ危機 労働者を犠牲にするイラク政府/未払い賃金 常勤雇用求めスト】

 全世界的なコロナ不況で石油消費量が大幅に減少し、石油価格が大きく下落している。国家予算の95%を石油収入に頼るイラクでは、これを口実に、政府が労働者に犠牲を強いている。政府企業に働く臨時雇用労働者や日雇い労働者には、4か月以上も賃金が払われていない。

 こうした攻撃に対し、5月19日、バスラなどイラク南部の電力産業で短期雇用の繰り返しを強いられる契約労働者たちが座り込みストを決行し、全産業でのゼネラルストライキを呼びかけた。この労働者たちの多くは十数年間も契約労働を続けているが、常勤雇用に転換されず無権利状態に置かれている。契約労働者らは未払い賃金の支払いと常勤雇用への転換を要求して立ち上がった。

 これに対し電力省は、ストライキの指導者であるワエル・シャキル・アル・アサディの配置転換を強行した。「遠方の南部地域」に異動させるという配転攻撃をかけてきたのだ。

 この攻撃に、多くの労働者や労働組合、イラク労働者共産党などが撤回闘争に立ちあがっている。2015年ZENKO(平和と民主主義をめざす全国交歓会)に参加したバスラの石油労働者アブ・ワッタンは、ストライキ支援の集会で全イラク労働組合連合議長として「我々は全面的に兄弟である労働者ワエルを擁護・支援する。ILO(国際労働機関)に苦情を申し立てる。組合活動へのいかなる処罰も許さない」と訴えた。

 こうした労働者・市民の闘いに支えられ、電力産業労働者のストライキは7月に入ってもなお続いている。5月に発足したカディミ政権は未払い賃金の支払いを示唆するなど、妥協姿勢を示さざるを得なくなったが、労働者はさらに生活と生命を守るコロナ対策を要求している。闘いは続く。

世界に連帯求める

 いまイラクの労働者は全世界にむけてストライキへの連帯を呼びかけている。あわせて宗派私兵を使ったイラク政権の暴力的弾圧に抗議するよう訴えている。イラクの腐敗政権を支えているのは、IMF(国際通貨基金)や世界銀行の融資、日本、アメリカなどのODA(政府開発援助)だ。これらグローバル資本の代弁者が緊縮政策と労働者の権利はく奪を要求しているのだ。イラク労働者の闘いに連帯し、日本政府にイラク政府へ加担するなと求めよう。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)



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