2020年07月24日 1634号

【ノーモア尼崎事故!集会/JR各社の安全崩壊明らかに/リニア新幹線の2027年開業は絶望的】

 2005年4月、107人の犠牲を出したJR尼崎事故から15年余。「ノーモア尼崎事故! 生命と安全を守る集会」が7月4日、兵庫県尼崎市内で開かれた。毎年、事故の起きた4月に合わせて開催されてきたが、今年は新型コロナの影響で延期。人と人との距離確保に配慮し、例年の約半分の参加者となった。デモ、事故現場での献花も中止された。

安全崩壊と改ざん

 集会では、「鉄道業務における業務外注化と労働問題」と題し、桐生隆文さん(JRに安全と人権を!株主・市民の会)が記念講演。JRが基幹業務の外注化を次々推し進めた結果、技術継承に失敗し、労働条件低下や技術不足、交通弱者へのしわ寄せ、偽装請負などの違法行為が続発している状況が報告された。

 JR現場からは、平田尚さん(国労西日本)が、継続して取り組んでいる大阪の片町線・鴫野(しぎの)駅でのホームからの乗客転落事故について報告した。危険な急カーブ上のホームが設置された鴫野駅ではホーム要員が削減される一方、多くの駅でホームドアなど安全設備の設置は進んでいない。だが、全国から9294筆の署名を集めるなど粘り強い闘いで、JR西日本も転落事故の多さと対策の必要性を認めた。衆院決算委員会でも取り上げられるなど、JRを追い詰めている。

 JR北海道に関しては、安全問題研究会からこの間の道内の動きと、2019年のレール検査データ改ざん問題の裁判について報告があった。2013年、函館本線大沼駅で起きた貨物列車脱線事故をめぐって、保線管理労働者がレール検査データを改ざんしたのではなく、JR北海道が曲線半径を実際より大きく見せる改ざんを行っていたのではないかとの指摘に会場から驚きの声が上がった。

 水道民営化反対の闘い、JAL争議団に続き、全日建連帯関生支部から闘いの報告があった。「関生支部が600日を超える不当勾留から委員長、副委員長を取り戻せたのは、市民が黒川検事長の定年延長を阻止する闘いに立ち上がったから。市民と労働組合の連帯が大切」との指摘は重要だ。「大阪府警から『お前らは国家権力と闘うんやろ。だからわしらもお前らには何をやってもいいんや』と言われた」と生々しい弾圧の実態が語られると、再び会場がどよめいた。

リニア 計画とん挫

 一方、JR東海が2027年の開業を目指して工事を進めてきたリニア中央新幹線は、静岡県でのトンネル建設で大井川の流量が毎秒2トンも減少するとの試算がまとめられて以降、静岡県が着工を認めず暗礁に乗り上げている。6月26日、金子慎JR東海社長と川勝平太静岡県知事が注目のトップ会談に望んだが物別れに終わり、2027年の開業は絶望的となった。

 静岡県では、1980年代にも中部電力による取水によって大井川が涸(か)れるなどの被害を受け、県民による水返せ運動が闘われた歴史を持つ。島田市など大井川沿線6自治体も、水問題が解決しない状況での工事着工は認めない方針だ。

 静岡県民の6割が、水問題をめぐる県の方針を支持しているとの世論調査結果も出ている。県内でほぼ唯一の水源である大井川の流量減少に対しては、住民のみならず医療機関、特産品であるお茶農家、ウナギ産業従事者など県内経済界にも懸念の声がある。政府が力任せに推進する国策に対し、不利益を押しつけられる地元が自治体、経済界、住民一体となって闘う。沖縄と同じだ。

 7月25〜26日の2020ZENKOin大阪では、リニア・JR問題の分科会も開催される。新自由主義JR検証から新しい公共交通のあり方へ、と多くの参加で議論する予定だ。



 
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