2020年07月31日 1635号

【福島原発かながわ訴訟控訴審 区域内外を区別しない賠償を】

 福島原発かながわ訴訟の第2回控訴審が7月17日、東京高裁で行われた。原告側弁護団は、責任論では津波予見に基づく国の規制の責任と長期評価採用の合理性を訴え、一審判決を踏まえて過失責任を迫った。損害賠償論では中間指針の不十分さを認めた一審を評価しながらも、ふるさとを喪失し今日まで続く被害に見合った賠償、区域内外避難を区別しない避難者への損害賠償を焦点に訴えた。

 第1回に続きこの日も原告が意見陳述に立った。いわき市で看護師をしていた原告は「周辺の草木から基準値の何千倍もの放射性ヨウ素が出ていると夫から聞いた。病院からは避難準備を言われ、テレビでは『外に出ないで。シャワーで放射性物質を洗い流して』とアナウンス。自宅は原発から約40キロだが、30キロで危険だと言われているのでとても安全とは思えなかった」と、避難の必然性を話した。「長男の健康を考えて神奈川に母子避難したが、いわき在住者からは疎まれ、同僚からも嫌味を言われ人間関係が壊れた。夫はいわきのお店がうまくいかず、長男はこちらでいじめや不登校に苦しみ、不安な生活が続いた。避難指示が出ていたら、経済的にも人間関係もここまではならなかった。『避難するかどうかを選ぶことができたんだから』と過小評価してもらいたくない」。一審で「自己決定権侵害慰謝料」が認められたことを評価しつつも、避難指示区域との慰謝料の格差・低さを問題にした。

 次回は10月2日となった。

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 国と東京電力の双方を相手どった原発事故避難者集団訴訟の控訴審が次々に結審している。

 「生業(なりわい)を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟(生業訴訟)控訴審が2月20日、仙台高裁で結審した(判決は9月30日)のに続き、群馬訴訟控訴審が7月9日、東京高裁で結審(判決は来年1月21日)。千葉訴訟第1陣控訴審も8月21日、東京高裁で結審する。

 一審12地裁判決のうち国の責任を認定したのは、群馬訴訟の前橋など7つ。生業訴訟弁護団の南雲芳夫幹事長は「国は前橋地裁判決を目の敵(かたき)にし、控訴審でひっくり返そうと今村(文彦・東北大教授)証人を充ててきた。もし国の主張を裁判所が認めるなら、原発規制の法体系は瓦解する。生業・群馬・千葉の控訴審勝訴判決で国を追いつめたい」と話している。

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