2020年08月07日 1636号

【避難者の裁判勝利 原発再稼働阻止へ ZENKOin大阪 反原発分科会】

 7月26日、ZENKOin大阪「原発廃炉、被災者・避難者の生活保障、裁判勝利をめざす」分科会は、福島原発事故から9年4か月経ったが根本的には何も解決していない、課題は山積していることを示す意見交換の場となった。

 大阪会場と東京会場、各地をオンラインで結んだ参加者は50人を超えた。つながった参加者は、分科会を機に今後情報交換のためのメーリングリスト作成、行動方針や意見交換を行う場としての定例的なズーム会議の開催を決めた。

責任認めさせ賠償増を

 損害賠償集団訴訟は国の責任を認めた前橋地裁判決以降、認定7件で否認は5件。最近は否認の流れが強い。国側は控訴審で長期評価に基づいた対策をとったとしても事故は防げなかった。絶対的な安全性はない≠ニ開き直っている。かながわ訴訟原告団長の村田弘さんは「控訴審では、国が規制権限を行使してこなかったことを争点に」。東電の刑事責任を追及する会・小林和博さんは「予見の可能性有無にかかわらず、過酷事故となる危険物を扱う上では『高度の注意義務』が課されていることを問題に」と指摘する。

 損害賠償額は、原子力損害賠償紛争審査会の中間指針を若干上回る程度の低さをどう挽回するかが課題だ。村田さんは「低線量・内部被ばくで今なお避難生活を続けざるを得ないことが賠償額に反映していない。『ふるさと喪失慰謝料』が区域外避難者には適用されず『自主避難』ゆえの差別・いじめがあるのは大きい」と述べた。

 千葉訴訟第一陣の控訴審は8月21日に結審を迎える。千葉県原発訴訟の原告と家族を支援する会の山本進さんは「第二陣の一審も国の責任を否定する判決だった。足を引っ張らないよう控訴審では逆転勝訴し流れを変えたい」と決意した。

 控訴審を闘う京都訴訟原告団共同代表・福島敦子さんは、区域外避難者の苦しみが反映されない賠償の低さを問題にした。「関西への避難は、放射線量の低さ、避難者受け入れの住宅制度があったから。一方で不登校となった子がおり、80%近い子どもが体調の変化を訴えた。今も成人の半数以上にPTSD(心的外傷後ストレス障害)の可能性が。苦しみは続いている」

福島県の人権侵害

 福島県田村市から都内に避難した熊本美彌子さんは国家公務員宿舎に住む区域外避難者への人権侵害を訴えた。「福島県は、あろうことかコロナで行動自粛が叫ばれていた3月末に4人の避難者を明け渡しで訴えた。有償契約の切れた避難者にはこれまでの家賃の2倍相当の賠償金を毎月請求し続けている。非正規労働、精神障がいで民間賃貸住宅家賃は払えない、公営住宅には年齢制限で応募資格もない。そういう事情を無視した避難者切り捨てだ。『子ども・被災者支援法』『国際人権法』に照らしても違法」と強調。裁判闘争支援を呼びかけた。

 福島県から明け渡しを提訴された国家公務員宿舎の避難当事者。「私はいわき市から会社が倒産して避難した。都内で勤めた会社も倒産。経済的に追い詰められ、精神病を患った。都営住宅を希望するが、応募は10回落ちて入れない。しかし福島県はわがままで居座っていると印象付けている。事情を裁判で訴えたいが、県は福島地裁に提訴したため、意見を話す場すら奪われた。東京地裁に移送するよう今申し立てている。裁判が始まればぜひ支援を」と語った。

10・26共同行動へ

 関電前プロジェクトの秋野恭子さんは「老朽原発の稼働は危険だと、福井県高浜・おおい両町に『コロナ禍で原発複合災害を起こさせないため、稼働中の原発を止めよ』と要請した。10月26日『反原子力の日』には各地で取り組もう」。

 医療問題研究会からは周産期死亡・低出生体重児の増加と放射能被ばくの関連が言及された。「福島事故で、『健康障がいがある』とされる世界的論文はほんのわずか。健康障がいを可視化していく」。避難の合理性を裏付ける意義あるデータが示された。

 最後に、10・26「反原子力の日」に各地で再稼働阻止、避難者住宅追い出し反対など様々な課題での共同行動を展開すること、来年の3・11原発事故10周年を共同して取り組むことを確認した。



  
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