2020年08月14・21日 1637号

【コラム見・聞・感/「本当のフクシマ」こぼれ話/仁志田「私物化」伊達市政と避難者の今】

 本紙1634号に掲載された「本当のフクシマ番外編」を読んで驚かれた読者も多いと思う。こんな重大な話を地方ミニコミ誌の発行区域内だけにとどめておくわけにいかないと思い、昨年来ずっと企画化を考えていた。今回は、その取材過程で入手した「こぼれ話」を紹介したい。

 仁志田昇司・前伊達(だて)市長は、市町村合併で伊達市が発足する前の旧保原町時代から町長を務めおり、在任期間は通算17年に及んだ(2018年市長選で落選)。国鉄職員からJR東日本社員という経歴の持ち主だ。その後郷里に戻って保原町長に当選。自分の出身町である保原町役場が合併後の伊達市役所になったこともあり、保原町以外の旧町住民の中には、仁志田市政に対し「旧保原町ばかり優遇している」という不満を抱く人も多かった。

 伊達市は避難指示区域外としては最も放射能汚染が激しく、特に避難指示区域並みの汚染だった霊山(りょうぜん)町小国(おぐに)地区では2011年6月、128世帯が「特定避難勧奨地点」に指定された。指定は2012年12月限りで打ち切られたが、精神的賠償月額10万円を受け取った指定世帯とそれ以外で住民間に対立が生じた。このため2013年、ADR(裁判外紛争解決手続)に集団申し立てをした結果、ADRセンターが住民の精神的苦痛を認め、地区住民に一律1人月額7万円の賠償を認めた。10万円から7万円に減額されても、「地区住民全員が公平に受け取れることが重要だ」と住民は語る。住民間で賠償に差が生じた場合、均等配分する話まで出ていたという。

 ADRのこの結果に押されて仁志田市長も一時は除染実施の公約を掲げながら、後に反故(ほご)にした。やはり除染拒否と放射能安全神話作りこそ、市長選での落選の原因だ。全国ベースで見れば小さな出来事に思えるが、仁志田氏のこの末路は、「私物化・ウソつき」安倍政権の今後をも予言している。

 こうした混乱の中、伊達市も多くの区域外避難者を出した。そのひとり、宍戸隆子さんは札幌市で避難者が多く住む雇用促進住宅で避難者の取りまとめ役を務めた。雇用促進住宅閉鎖後の現在は札幌の隣町、江別市で喫茶「えぞりす亭」を経営しながら原発避難者賠償札幌訴訟に臨む。今年3月の不当判決にも怯(ひる)むことなく意気軒高だ。北海道を訪れる人には「えぞりす亭」を案内したい。 (水樹平和)
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