2020年08月14・21日 1637号

【子ども脱被ばく裁判が結審 被ばくと安全な環境を焦点化 福島地裁の判決は来年3月1日】

 福島原発事故の子どもへの健康被害を正面に据えて国と県を訴えた「子ども脱被ばく裁判」(2014年提訴)は7月28日結審を迎えた。福島地方裁判所にはコロナ禍と大雨の中、約50人の支援者が集まった。6年間にわたって積み上げてきた証拠を弁護団が400ページに及ぶ最終準備書面にまとめ、提出した。

 裁判は、体内に入ると排出されにくい不溶性放射性微粒子(セシウムボール)≠フ存在を初めてクローズアップ。「放射能安全神話」の元凶・山下俊一(事故直後の福島県放射線リスクアドバイザー)を尋問に引き出すなど、全国の運動に大きな影響を与えた。

 井戸謙一弁護団長は「安定ヨウ素剤の投与指標は、国際的に大人は100_シーベルト、子どもは10_シーベルトとされていたが、2001年に設置された山下座長の『ヨウ素剤検討会』が子どもも100_シーベルトでいいという結論を出した」と指摘。

 安全な環境で教育を受ける権利では、環境基本法で放射性物質の具体的な環境基準値が定められていないことを追及してきた。井戸弁護士は「1_シーベルト追加被ばくすればがん死のリスクは1万人に0・5人増加する。国際基準とされる10万人に1人のリスクをもたらす生涯線量は200マイクロシーベルトとなり、年換算で2・9マイクロシーベルト追加被ばくが基準になるはずだ」と主張した。裁判所の判断が注目される。

 この日最終意見陳述に立った原告団代表の今野寿美雄さんは「なぜ福島県から避難しているのかという根拠が不溶性放射性微粒子≠フ存在によって明らかにできた。今までなぜ不安なのかということをうまく説明できなかったが、これが根拠になった」と語った。

 判決は来年3月1日午後1時30分に決まった。

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