2020年09月04日 1639号

【ソウル市長のセクハラ疑惑 真相究明!日本でも禁止法制定を】

 朴元淳(パクウォンスン)ソウル市長の突然の死(7/10)は、衝撃だった。

 朴市長は秘書の女性がセクハラ被害を告発した直後に自殺した。もともと人権弁護士として活動し、女性の人権問題でも進歩的な立場が評価されていた。市長に就任してからも、ジェンダー平等の必要性を強調、#MeToo運動を支持し、市政民主化をすすめていた。

 だが、秘書の女性に対し、延々4年間も性的な嫌がらせを行っていた。到底許されるものではない。市長と秘書という支配関係の中で続いていたセクハラであり、訴えを取り上げなかった職場の隠ぺい体質も問題だ。

 現在、韓国の独立機関・国家人権委員会(2001年設立)で真相究明の調査が始まっている。人権委は、前市長のセクハラ行為、職場内での黙認の実態、セクハラ事案に関する改善法案の検討を行うことになっている。被害者を支援している女性団体は「市長は死んでも加害の事実は消えない」「ソウル市は被害者に謝罪し、暴力を黙認しないジェンダー平等の組織を作れ」との声をあげ、被害者に対する二次被害の防止、救済措置を要求している。

背景に#MeToo運動

 韓国ではセクハラで「有力政治家」が次々と失脚している。2018年には安熙正(アンヒジョン)忠清南道(チュンチョンナムド)知事が性暴力事件で辞任、呉巨敦(オゴドン)プサン市長もセクハラ疑惑で今年4月に辞職。いずれも与党「共に民主党」の政治家だった。

 立て続けにセクハラ疑惑が表面化してきたのはなぜか。韓国は、日本と比べて、女性の人権保障の制度では民主化が進んでいる。女性の地位向上を推進するために女性家族部ができ、戸主制度は両性の平等に反すると廃止された。しかし一方では男女の賃金格差が大きいなどの課題もあり、「制度や法律が変わっても価値観は変わらない」という問題が指摘されていた。

 それを大きく変えたのが、2年前からわきおこった#MeToo運動だ。政治家や学者など社会的な地位にある人のセクハラを見逃さず、告発し続ける運動の広がりが背景にある。

 日本でも、ようやくセクハラ・性暴力を受けた女性たち、当事者たちが声を上げ始めているが、セクハラを許さない社会を作るための課題は山積みだ。まず、ILO(国際労働機関)「仕事の世界におけるセクシュアルハラスメント撤廃条約」をただちに批准させよう。セクハラ禁止法の制定を実現させよう。

(OPEN<平和と平等を拓く女たちの絆>・山本よし子)

写真;7月28日、ソウルでの女性団体のデモ/横断幕は「ソウル市」に人権を、女性に平等を」
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