2020年09月04日 1639号

【議会を変える 駅周辺再開発計画と市民の懸念 京都府向日市議 杉谷伸夫】

 向日(むこう)市は、京都市から大阪に向かい隣接する人口6万人弱の小さな都市ですが、JR「向日町」駅は、京都駅よりも先に京都で最も早く開業した鉄道駅です。向日市の東部に位置し、操車場があるため十数本の線路が走るJR敷地は広く、開かずの踏切が1か所ある以外は東西を結ぶ道はすべて狭い地下道であり、JR軌道敷によってまちが東西に分断されています。駅の改札口は西側にしか無く、西側は密集市街地となる一方、東側は農地が広がっています。

 「向日町駅の東口開設」は半世紀以上前からの課題でしたが、多額の財源を要するため、実現しませんでした。

 3年前、市はJR東側地域に企業誘致を進め、駅舎の橋上化・東口開設と一体の計画として、東側に駅ビルを建設することを柱とする駅周辺再開発計画を発表しました。それに歩調を合わせ、東側農地に日本電産の第二本社の進出が具体化し、すでに事業が着手されています。そして今年5月末、駅ビルは最大36階(百メートル級)の高層マンションと中低層の商業施設の複合ビルとする合意内容が公表され、早ければ9月中にもそのための都市計画決定がされる予定です。

 「マンションを含む高層ビル」という構想は早くから公表されていましたが、市民に周知されていたとは言いがたく、いざ「百メートル級の高層マンション」案が示されると、「あまりに高すぎる」「タワーマンションは様々な問題がある」「向日市のまちにふさわしくない」など、反対意見が噴出しています。一方で、「まちの活性化につなげてほしい」「一刻も早く実現を」「計画を頓挫させてはならない」など推進を求める声も多く、都市計画変更の住民説明会では、賛否が飛び交いました。

 5月末から始まる定例議会には、市民の請願が出されるもようです。高層マンションを容認できるか否かが最大の争点になります。しかし、新型コロナウイルスの問題で市民も議会も振り回されてきた中で、短期間に計画決定を行おうとすること自体に問題があります。行政には、市民から指摘されている課題の説明を先送りせず、疑問や懸念にしっかりと答えることが必要です。議会には、市民を代表してその議論が求められます。一議員ができることには限りがありますが、その姿勢で臨みたいと思っています。
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