2020年09月11日 1640号

【放射性廃棄物最終処分場が急浮上/北海道寿都町受け入れ表明にNO】

 北海道寿都(すっつ)町で、高レベル放射性廃棄物最終処分場への立候補が検討されていることを8月13日、メディアが一斉に報じた。片岡春雄町長は「国のエネルギー政策のためになる。町民以外の意見は聞かない」などと反対論に耳を貸さず、初めに受け入れありきの姿勢だ。早ければこの秋の受け入れ強行を狙う。

 原発の運転に伴う高レベル放射性廃棄物(核のゴミ)は無害化までに10万年かかるとされる。処分方法も処分地も決めないまま国は「将来の技術開発に期待する」形で原発を「見切り発車」させた。問題化することはわかっていたが、「今さえ利益が出ればいい」と無責任に原発を推進した結果、事態は予測どおりに推移している。

 焦りを深める国は、処分場建設のためのボーリング調査に応じただけで20億円を交付する制度を創設。2007年、高知県東洋町が候補地に名乗りを上げたが住民の反対で取り下げた。これ以降、厄介な核のゴミの最終処分場の誘致を目指す地域は現れなかった。

 片岡町長は「地元経済団体と学習会を開いて誘致を検討してきた」と認めた。「地方自治も大事だが金儲けも大事」と、カネのためなら平然と地方自治を否定する発言を繰り返してきた。01年の選挙で初当選し現在5期目。05年、09年、13年、17年の選挙はすべて無投票だ。20年近くも選挙による審判を受けていない人物が北海道全体の運命を決めようとしている。

 だがこれは決して北海道寿都町だけの問題ではない。過疎化と財政難、地域にとって唯一の産業でもある漁業の不振、民主主義の内部崩壊など、地方では程度の差はあれ共通して抱える問題が背景にある。「第2の寿都町」はいつどこに現れても不思議ではない。


地元も知事も反対

 寿都町の周辺自治体や道内の反原発運動団体は一斉に反発、受け入れ阻止に動き始めた。観光先進地として、コロナ前までは全国から視察が殺到していたニセコ町、ドラマで町興しを進める小樽市は反対を表明。隣接3町村(黒松内(くろまつない)町、蘭越(らんこし)町、島牧(しままき)村)は受け入れをやめるよう8月24日、片岡町長に申し入れた。北海道には全国で唯一、最終処分場を拒否する条例があるが、片岡町長は「泊原発を認めながら最終処分場は拒否するという論理は通用しない」と公然と条例無視の構えだ。

 こうした片岡町長の無法ぶりに対し、日頃はあいまいな姿勢をとることも多い鈴木直道道知事までが怒りを表明。「財政難の基礎自治体の頬を札束で叩くやり方だ」と強い表現で国と町長を批判。国に意見を求められれば反対を表明すると述べた。地元で急きょ始まった署名は短期間で8千筆を集めた。受け入れ反対の声は急速に拡大している。

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