2020年09月11日 1640号

【非科学・政治都合のコロナ対策―典型は大阪府市/維新はコロナより「都構想」】

 新型コロナウイルス対策への財政出動は二の次にされ、政治の都合が優先され続けている。その典型例が大阪府市の維新政治≠セ。新型コロナ対策は政府・自治体の市民に対する義務であり、政治の都合ではなく科学的根拠に基づくものでなければならい。

厚労省基準盾に検査拒否

 大阪市解体の住民投票にしか視野にない維新府市政は、学校での新型コロナ対策を拒否している。

 市議会には「新型コロナ患者が出ても教職員・児童・生徒のPCR検査はほとんど行われていない。検査をしっかりやり対策を早急に立てるべき」と市民からの陳情があげられている。大阪市が「濃厚接触者がいない」ことを盾に健康診断(検査)を行おうとしないからだ。

 ここでいう「濃厚接触者」は「患者(無症状病原体保有者を含む)の感染可能期間に接触した者」のうち(1)手で触れることのできる距離(目安は1メートル)(2)感染予防策なし(3)15分以上接触があったの3条件を満たすものとされる。「換気・マスク着用・分散登校」などにより「感染予防策あり」で検査不要との理屈だ。これは、厚生労働省・国立感染症研究所の「積極的疫学調査実施要領」に定められた基準だ。

 では「積極的疫学調査」の目的は何か。

 厚労省は「感染症などのいろいろな病気について、発生した集団感染の全体像や病気の特徴を調べることで、今後の感染拡大防止対策に用いることを目的として行われる調査」とする。目的は、病気の正体を突き止め、将来の感染対策策定の材料集めだ。

 一方、市民や教職員の要求は何か。

 「子どもが感染していないか」との保護者の不安の解消、「自分が感染源になっていないか、ならないか」との教職員の安全対策だ。新型コロナの潜伏期間は1日〜14日とばらつきがあり、発症前から感染性を持つ。学校という限られた空間で患者が出れば、患者周囲への感染を疑うのは当然だ。保護者・教職員が求める検査の目的は、学校内での安全だ。根拠のある保護者・教職員の不安に本来行政は応えなければならない。

 この要求に、目的が異なる「積極的疫学調査」の基準を持ち出す大阪市の対応に一片の正当性もない。

 学校を安全に再開するためには、新型コロナウイルス感染症患者の接触追跡や迅速隔離といった対策が重要だ。その対策をないがしろにしてはならない。

無知無策のホラ吹き維新

 大阪維新の吉村洋文大阪府知事・松井一郎大阪市長は頻繁にコロナ対策の「情報発信」をしてきたが、非科学、無責任、その場しのぎが目立つ。感染防護具のための「雨合羽」、病院丸ごと感染病棟化、大阪発のDNAワクチン。これに続いたのが吉村の「うがい薬でコロナに打ち勝つ」。イソジンうがいで陽性者が減るとの「研究成果」なるものを嬉々として発表したが、批判が出ると「予防薬でも治療薬でもない。みなさん誤解している」と責任転嫁し開き直る。ヨウ素の過剰摂取による健康被害が指摘されているのにもかかわらず、府民に対してイソジンうがい励行≠公式WEBページで呼びかけ続けた。

 子どもたちにフェイスシールド着用を求めたことには「医療従事者を守るもの。学校生活で必要はない。かえって熱中症のリスクなどトラブルが心配」と大阪小児科医会が批判している。

 大阪に重症者数が多いことについて吉村は「大阪では死亡者を減らすため早めに人工呼吸器をつけている」と取材に答えた。人工呼吸器をつけると「重症者」とカウントされる。数字の上で「重症者」が増えても、死亡者を減らすためだから状況が悪くなっているのではない≠ニでも言いたいのだろう。

 だが人工呼吸器の装着は個々の患者の病状により医師が判断する。新型コロナだからと大阪だけ「早めに装着する」などあり得ない。これは多くの医師が指摘していることだ。思い付きで答えたのか、状況を楽観視させようとしたのか。いずれにせよ新型コロナ感染症対策責任者の知事としては不用意・無責任な発言だ。

 維新の非科学・無責任な新型コロナ対策の原因は、「情報発信」で府市一体のやってる感≠アピールし、「都構想」に世論誘導するためだ。コロナ蔓延(まんえん)状況によっては延期と言っていた住民投票もなにがなんでも実施≠ノ舵を切った。住民投票の根拠となる大都市法の規定では大阪府・市議会で「都構想」協定書承認後、60日以内に住民投票を実施しなければならず延期を可能とする規定はない。それを承知で、臨時両議会まで開催し可決強行に突き進んでいるのがその証拠だ。

 「都構想」だけではない。万博や経済政策など、政治の都合で命にかかわる新型コロナ対策を左右することなど許されない。



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