2020年09月11日 1640号

【未来への責任(305) 日韓会談文書アーカイブズを開始】

 8月8日、「日韓会談文書等管理委員会」(旧「日韓会談文書・全面公開を求める会」)は、外務省が開示した日韓国交正常化に関わる1916の公文書、約6万ページのデータを登載した「日韓会談文書アーカイブズ」をフルオープンした。

 2005年に韓国では被害者らの裁判闘争の結果、日韓会談文書が全面公開された。日本でもこれに応えようとその年の12月、私たちは「日韓会談文書・全面公開を求める会」を結成した。翌06年4月に、被害者を含む日韓の市民約750名の連名で、日本の外務省に対し、日韓会談関連の公文書の全面開示を情報公開法に基づき請求した。

 私たちは、3次に及ぶ不当な不開示決定の取り消しを求める行政訴訟で、重要な文書については行政不服審査でも闘った。裁判には、原告として軍隊慰安婦被害者の李容洙(イヨンス)さん、日鉄元徴用工の呂運澤(ヨウンテク)さんにも加わっていただいた。一口に6万ページと言っても、日韓市民による10年に及ぶ長い闘いの結果である。

 さらに、私たちは、開示させた公文書をすべてホームページで公開し、誰でも自由に閲覧できるようにしてきた。すでに、多くの研究者やメディアが、「求める会」のホームページで日韓会談文書を閲覧・分析し活用して研究論文や記事を発表している。情報公開法は01年に施行されたが、この闘いには情報公開に関わるあらゆる運動実践が凝縮されていると言っても過言ではないだろう。

 「求める会」は裁判闘争、行政手続きの終結に伴い16年12月に解散し、「日韓会談文書等管理委員会」に改組された。同時に、私たちは「未来につなげる新たなアーカイブズ」の構築を宣言した。外務省の開示文書は様々な情報が混在し、作成年月日もばらばら。市民が知りたい情報に簡単にはたどり着けない問題があった。「日韓会談文書アーカイブズ」は、一つ一つの文書の内容をデータベースにし、テーマやキーワードで関連文書を簡単に検索できるようにしたものだ。3年以上かかったが、6万ページの文書すべてを市民の手で整理したアーカイブズは他にはなくおそらく初めてではないだろうか。

 韓国大法院判決後の厳しい日韓関係だからこそ、日韓国交正常化交渉で何が議論され、何が解決したのか、市民自ら関心を持つことが大切だ。日韓関係の歴史事実、背景を正しく冷静にとらえていく上で不可欠と思う。そのために「日韓会談文書アーカイブズ」で検索し、ぜひ活用してもらいたい。また、運営維持のための寄付も大歓迎です。

(日本製鉄元徴用工裁判を支援する会 山本直好)

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