2020年09月11日 1640号

【MDS コロナ危機を克服し社会を変える18の政策/《第4回》 介護 「国家的詐欺」となる介護保険は廃止だ 全額公費負担の介護支援制度を】

 新型コロナウイルス感染拡大で、介護をめぐる状況は悪化し介護保険の問題点がより明らかになった。

 介護利用者が減り、小規模の介護事業所の経営はいっそう悪化した。全日本介護事業者連盟の調査では、通所介護の利用控えで事業所の9割で経営が悪化している。NHKの調査では介護事業所の休業は883件(4/20段階)。行き場のない要介護者が増えている。利用抑制により状態が悪化した在宅利用者や、家族との面会ができないことで認知機能の悪化した施設入所者も増えている。介護保険は機能不全状態だ。

特例でなく10万円賃上げ

 国は、事業所の救済策として、感染防止に取り組む事業所に対し、介護報酬の上乗せ請求を認める「特例」を実施した(6/1より)。サービス内容が同じでも利用者負担は増える。利用者の同意が前提だが、介護者との関係悪化を恐れ負担増を断わりにくい実態がある。現場に軋轢(あつれき)をもたらす「特例」はいらない。今必要なことは、減収分を全額国の負担で補填する救済策だ。事業者の倒産や休業の増大は介護崩壊を招く。

 介護現場では利用者との密な接触は日常だ。「自分が感染させてもさせられても大変だ」との緊張感で仕事をしている。安心して介護・利用ができるために、「介護者・利用者がいつでもどこでも何度でも無料でPCR検査ができる体制を」―これが現場の切実な要求だ。感染を心配した利用抑制、休業、介護従事者の退職を食い止めるため緊急に必要だ。

 介護現場は慢性的な人手不足。劣悪な労働環境、低賃金が原因だ。全職種平均より約10万円低い介護労働者の賃金を国負担で10万円引き上げ、労働環境を改善すれば人は増える。コロナ禍の今、賃金をアップさせ人員確保へ転換するときだ。

保険制度の基本的欠陥

 2000年、「介護の社会化」をうたい文句に介護保険制度が発足した。

 介護保険では、40歳以上の人はもれなく保険料支払い義務が生じる。生活保護受給者、市民税非課税者からも容赦なく保険料を徴収する。徴収率を上げるために年金が月1万5千円以上あれば自動的に年金から引かれる。保険料を払えない低年金者は介護サービスを受けることができない。介護保険の基本的欠陥だ。

 介護支援を受けることができるのは原則65歳以上の要介護認定者。給付負担の内訳は国25% 都道府県12・5% 市区町村12・5% 保険料50%となっており、給付増が保険料の増加に連動する。加えて、要介護度に応じて利用できる上限額が決まっており、給付が抑制される。

 高齢化に伴い介護給付費は増え続ける。介護保険制度は3年に1回見直されるたびに、保険料が上がり、介護サービスが削減され、介護報酬も切り下げられた。

 介護保険料の全国平均は、00年2911円、19年5869円。厚労省は、25年7200円と試算している。

 15年には、要支援1、2を介護保険から外し、市区町村の総合事業に変えた。また、特別養護老人ホームの入所基準を要介護3以上に限定するなど、大幅な給付削減を実施した、

 21年改定でさらに要介護1、2も外すことがもくろまれ、これまで無料のケアプラン作成の有料化も狙われた。多くの反対の声で見送られたが、完全に断念させなければならない。


尊厳ある生活は国の責任

 保険料の引き上げは限界だ。給付切り下げも介護保険制度と言えなくなるもので「国家的詐欺」に等しい。これ以上の保険料引き上げ、給付切り下げを回避するために、介護給付費の国負担割合を大はばに引き上げなければならない。

 介護保険制度は制度そのものがいずれ破綻する。高齢者福祉、介護は全額公的負担で行うべきだ。

 尊厳ある生活を保障する介護支援の責任は国にある。介護保険は廃止して、保険料や自己負担なしの新たな公的介護支援制度を創設しなければならない。もちろん全額国庫負担だ。
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