2020年09月11日 1640号

【たんぽぽのように(15) 2020年の夏 李真革】

 今年の夏も暑い。「暑いですね」と、その日の天気からあいさつを始めることにもある程度慣れたが、日本の夏はまだまだ暑い。

 今年の夏は、知り合いの人たちから「特別定額給付金は受けたのか」「ビザの問題はないか」などと時々、聞かれる。新型コロナウイルスがなお流行している中で、外国人の私が無事かを心配してくれる人びとがいることに感謝する日々だ。

 今年は、ゴールデンウィークもお盆休みも、家を離れることができなかった。昨年までは、お金と時間が許せば、外国にもいつでも行くことができたが、今はどこであろうと遠く離れること自体が難しくなった。

 私は在留資格を持っているが、日本を一度離れたら戻ってくることができなくなって半年が過ぎた。日本国籍を持っているか、特別永住者であるか以外の場合、日本から出て再入国できる外国人はごく少数にすぎない。ふるさとの家族や友人に会いたくても会えない。高齢の両親が健康を維持することを祈るしかない。国境を越えるだけでなく、生活そのものが脅かされている時代だが、200万人を超える日本国内の外国人たちはどのような日々を過ごしているだろうか。

 韓国に住んでいる外国人も、日本の場合とあまり変わらないようだ。ビザを持っている場合でも、韓国を一度離れると再び入国するのは難しい。韓国政府の緊急災害支援金の支援対象にも外国人はほとんど含まれていない。医療保険に加入していない、または保険料を納めていない外国人は、「公的マスク」の購入からも排除される。緊急災害アラートや防疫情報がすばやく伝達される韓国だが、外国語のサービスはほとんどなく、ハングルを読めない外国人には伝わらない。

 こうした問題は、日本と韓国だけの問題ではないだろう。職場や街中で毎日のように直面する多くのことが、実は外国人には差別的な場合が本当に多い。「仕方がない状況だから」「誰もが同じように厳しい時代だから」と言っても、最も脆弱な存在は外国人ではないのか。確かに、自分の健康一つ守るのも大変なこの時期、周囲までケアすることは決して容易ではない。まして、このように暑い夏の日には…。

 しかし、私たちは人間とは何か、国家の責務とは何かの問いかけに、真剣に答えなければならないだろう。

(筆者は市民活動家、京都在住)
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