2020年09月11日 1640号

【南相馬・避難20_シーベルト基準撤回訴訟結審 解除ありきは許さない 判決は来年2月3日】

 放射能空間線量年間20_シーベルトを基準に国が「特定避難勧奨地点」を解除したのは違法として福島・南相馬市の808人が東京地方裁判所に撤回を訴えた裁判(2014年12月)は8月27日に結審した。判決は来年2月3日午後3時と決まった。この日、福島からの原告十数人を含め約60人が傍聴行動、報告集会に参加した。

 最終陳述には、弁護団と菅野秀一原告団長が立った。

 弁護団は、解除は一般人の被ばく限度を年間1_シーベルトと定めたICRP(国際放射線防護委員会)勧告に反し、解除の要件となる地元住民の関与も無視されたと批判した。「参考レベルは1〜20_シーベルトの下方部分からの選択となっているのに、政府が緊急被ばく時の20_を持ち出すのは誤りだ。解除による避難支援の終了、帰還強要は放射線防護措置に関する原則、害より便益に重きを置く『正当化の原則』、被ばくの低減を配慮した『最適化の原則』にも反する」「(解除にあたっては)『説明会であり協議の場ではない』と言い切り、初めから解除ありきの姿勢だった」と強調した。

 菅野団長は「若い人は帰らず、限界集落となった。農家は家や田畑を売ろうとしても買い手がいない。キノコなど測定してもまだまだ高く食用にできない。大自然の崩壊、地域コミュニティ、家庭家族の崩壊が現状だ。原発事故が起きれば、私たちと同じように悲惨なことになる」と訴えた。

 報告集会では、ふくいちモニタリングプロジェクトや市民放射能監視センターの活動が評価された。原告世帯の96%が放射線管理区域の土壌基準を超えていること、国の線量換算のまやかしなどを問題としてきた。

 福田健治弁護団長は「訴訟を通して、放射能の実態(数値)の情報に基づく議論、記録して後世に伝えていく大切さを提起できたと思う」。藤原保正原告団副団長は「賠償金をとって生活しただけで、帰れない地域になってしまったことを訴訟として記録に残さないと、孫たちから墓石をけ飛ばされるのではないかと思って立ち上がった」と振り返った。

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