2020年09月18日 1641号

【東リ偽装請負事件控訴審 一発結審許さず公正審理求める 解雇撤回―直接雇用の逆転勝利へ】

 東証1部上場の住宅関連メーカー東リ株式会社(兵庫県伊丹市)で働いていた5人の非正規労働者が不当解雇撤回と直接雇用を求めた東リ偽装請負事件の控訴審第1回口頭弁論が9月2日、大阪高等裁判所で開かれた。司法反動の下「トレンド」となっている一発結審≠ヘ許さず、実質審理で逆転勝利をめざす闘いがスタートした。

派遣法40条6の攻防

 東リ偽装請負事件は、派遣法(2012年改定)40条の6「労働契約申し込みみなし」制度(注)に基づいて直接雇用を求めた日本初の裁判だ。ところが、3月13日の神戸地裁判決は、現場実態を見ないまま「偽装請負は認定しない」として棄却する不当なもの。これでは労働者保護趣旨の制度は完全否定される、5人だけの問題ではない、と、支援者らが裁判所前ビラまきを行い、傍聴には東京、名古屋からの参加も含め40人以上が駆けつけた。

 控訴人(原告)、弁護団、10人に制限された傍聴者が緊張して見守る中、開廷。裁判長は冒頭、東リ代理人に対して次回までに、契約を請負から派遣にした際、指揮命令がどう変わったかなど3点の釈明(質問)をと要求し、控訴人側にも質問した。即結審ではない―一瞬、安堵(あんど)の空気も流れる。藤澤泰弘・LIA労組執行委員長が公正審理を求めて力強く冒頭陳述(要旨別掲)し、第2回期日は10月23日11時30分となった。

運動の力で支える

 報告集会で村田浩治弁護団長は「2回目を決めたのは裁判所も一審で審理が尽くされたとは思っていないことを示すが、予断は許されない。次回へ証人採用に力を尽くす。ぜひ注目を」。

 LIA労組を勝たせる会共同代表のコミュニティユニオン関西ネットワーク大橋直人さんは「この重要な裁判で不当な判断を許さないため運動の力で支えていく」、同様にみなし制度で闘う全港湾名古屋支部日興サービス分会も「7月名古屋地裁判決は棄却の不当判決だったが、偽装請負を認め9割9分勝った内容。控訴審で覆すためともに闘う」と連帯を訴える。控訴人一人ひとりが逆転勝利へ決意表明し締めくくられた。

 なかまユニオン井手窪啓一委員長は「このコロナ禍で、朝8時ビラまき約20人、傍聴も40人以上が集まったのは、勝たせねばならないという強い思いの表れ。原告5人も全員参加で頑張っているが、勝利のハードルは高い。一層のご支援を」と呼びかけている。

(注)派遣法違反を逃れる目的で偽装請負させた場合、派遣先企業が当該労働者に対して直接雇用の申し込みをしたとみなされるもの

冒頭陳述(要旨) 偽装請負の真実見極め 一審不当判決の誤り是正を

 私たち5名の控訴人らは、東リ伊丹工場で4〜18年以上、正社員が嫌がるような工程を、請負という形で低賃金の非正規雇用で働いてきました。長年東リから指揮命令されてきた実態に従い法律に基づく権利を行使した途端に、工場から放り出されてしまいました。

 こんな理不尽は許されないと裁判を決意しましたが、原審の神戸地方裁判所は、私たちが工場の一員として仕事をしてきた実態すべてを否定する判決を出しました。偽装請負を説明もなく否定した公正さのかけらもない不当判決でした。

 2017年3月末で工場を放り出された後、私は失業保険で食いつなぎ、なんとか得た仕事も新型コロナ禍のもと本年6月末日、雇い止めとなりました。いよいよ生活すること自体が難しくなってきております。

 東リには、違法派遣・偽装請負を行い、挙げ句に物を捨てるように放り出したことを謝罪し、一刻も早く職場に戻してほしいです。

 改正労働者派遣法40条の6は、労働者の保護を目的に制定された法律であるのに、裁判所が偽装請負の事実を真摯に見ることすらしないのでは、誰も私たちを救済することはできません。

 立場の弱い者を守る最後の砦は裁判所です。高裁が審理を尽くし、私たちの労働実態、事件の真実を見極め、原審の誤りを正して下さるものと信じています。

(控訴人 藤澤泰弘・LIA労組執行委員長)

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