2020年09月18日 1641号

【関東大震災97周年 朝鮮人虐殺犠牲者を悼む/妨害のり越え 式典開催/小池都知事 今年も追悼文送らず】

 関東大震災から97年目の9月1日、東京・墨田区の横網町公園で、虐殺された朝鮮人犠牲者を追悼する式典が執り行われた。

 東京都は昨年末、右翼団体との“トラブル”を理由に「公園管理上支障となる行為はしない」「条件が守れない場合は不許可となっても異存ありません」とする誓約書の提出を式典実行委員会に求めてきた。都は、2017年以来同じ公園で虐殺否定の集会を開いている同右翼団体にも「公平に」誓約書提出を求めたという。だが、「不逞(ふてい)在日朝鮮人が日本人を殺した」などと連呼する差別者の集会と差別の犠牲者を悼む式典とを同列に扱うことは不見識も甚だしい。

 誓約書提出要求に抗議する声が急速に広がった。式典実行委の声明には賛同が多数。都庁前では100人を超す人びとがスタンディング。識者117人連名の声明が発せられ、撤回を求めるネット署名は3万筆を超えた。都は7月末、誓約書要求を取り下げ、8月3日には右翼団体による「不逞朝鮮人」などの発言を都人権尊重条例の「不当な差別的言動」=ヘイトスピーチと認定した(しかし、同団体の公園使用は許可)。

 開式のことばは式典実行委員長の宮川泰彦さん。「虐殺の背景には朝鮮人に対する日本社会の支配者意識・差別意識があった。過去の事実にきちんと目を向けることが大事だ。絶対に同じ過ちを犯してはならない」と力を込めた。

 追悼の辞では「都知事は朝鮮人虐殺を『歴史家がひもとくもの』として認めず、個別の追悼辞は出さないという。かたくなに虐殺の事実を語らない追悼とは一体何が目的なのか」「朝鮮学校に通う子どもたちを高校無償化・幼保無償化から除外し、対朝鮮政策の人質にとるような陰湿で狡猾な差別をやめるよう求める」などの訴えがあった。

 初めて米国から映画監督オリバー・ストーンさんとアメリカン大学教授ピーター・カズニックさんが共同でメッセージを寄せ、「過去に向き合うことは私たちの国が今直面している課題でもある。人種的抑圧、広島・長崎への原爆投下を含む第二次世界大戦の負の遺産、帝国の歴史といった問題だ」と共感を示した。

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